同じように折っているのに、角がずれる。細かいところで紙が切れる。
その原因は、折り方ではなく紙かもしれません。
折り紙用紙は、どれも同じ正方形の紙に見えます。ところが中身はずいぶん違っていて、紙の繊維の絡み方、断裁の正確さ、柄の摺り方が、それぞれ別のところで折り上がりを左右します。
面白いのは、この3つに手をかけている会社が、それぞれ別にあることです。紙そのものを作る会社、揃えることに手間をかける会社、柄を一色ずつ摺る会社。
この記事では、日本製の折り紙用紙を作っている3社を紹介します。あわせて、サイズと厚み、色数の選び方もお伝えします。
【早見表】何を折るかで、紙が決まります
| 折るもの | 向いている紙 | 作っている会社 |
|---|---|---|
| 鶴・かぶと(毎日の折り紙) | 定番の単色おりがみ | トーヨー(栃木) ▾ |
| 連鶴・くすだま(折り目が命) | 美濃和紙の折り紙 | 古川紙工(岐阜) ▾ |
| 箱・袋(形を保ちたい) | 厚みのある和紙 | 古川紙工(岐阜) ▾ |
| 柄を見せる・贈り物 | 千代紙 | いせ辰(東京) ▾ |
| 覚えておくこと | 紙で変わるのは「折れる形」です。腕ではありません | |
会社名を押すと、その解説へ飛べます。
1. 折り紙用紙は、同じではありません
売り場に並んでいる折り紙用紙は、大きく3つに分かれます。色だけの単色おりがみ、和紙で作った折り紙、そして柄の入った千代紙です。
3つの違いは、どこにあるか
単色おりがみは、いちばん見慣れた形です。枚数が多く、色数も選べる。鶴やかぶとのように、一枚を素直に折っていく作品に向きます。
和紙の折り紙は、繊維の作りが違います。ちぎれにくく、折り目がくっきり残る。そのぶん一枚あたりの値段は上がります。
千代紙は、柄を見せるための紙です。折るためというより、折ったあとに柄が出ることを楽しむものだと考えてください。箱や小物に貼って使う人もいます。
「ハリ」という言葉が、どの会社からも出てきます
折り紙用紙を調べていて面白かったのは、作っている会社が揃って「ハリ」の話をすることでした。
ハリとは、紙のコシのことです。強すぎると、折っている途中で切れる。弱すぎると、たるんで折り目が甘くなる。この加減が、そのまま折り上がりに出ます。
紙を漉く会社も、裁つ会社も、同じところを見ている。そう分かると、値段の差がどこから来るのかも見えてきます。
2. 古川紙工|流し漉きが、ちぎれにくさを作る
繊維が絡むから、薄いのに切れない
岐阜県美濃市に、古川紙工という会社があります。1835年(天保6年)の創業で、はじまりは美濃で作られた紙を商うことでした。
この土地の紙を美濃和紙といいます。日本三大和紙のひとつに数えられる紙です。
美濃和紙の手漉きには「流し漉き」という方法が使われます。簀の上で原料を前後に揺らす漉き方で、繊維が複雑に絡み合う。その結果、薄く、強く、むらのない紙になります。
古川紙工の折り紙は、この手漉きの技術を機械抄きに取り入れて作られています。だから薄いのに、引っぱっても切れにくい。
折れる形が、増えます
この紙で何が変わるか。会社の説明が、いちばん分かりやすいと思います。
「今まで破れてしまいがちだった折り方も、破れにくくパリッとした仕上がりになります」
具体的には3つです。ちぎれにくいので、連鶴のような複雑な折り方に耐えます。連鶴は、一枚の紙を切り離さずに複数の鶴をつなげる折り方で、細くつながった部分が破れやすいところです。
次に、折り目がくっきり出ます。くすだまのように、折り目そのものが形を作る作品で差が出ます。最後に厚み。容器や袋を折ったときに、パリッとした形が保てます。
なお、紙にはつるつるの面とざらざらの面があります。どちらを表にするかで印象が変わるので、折る前に一度確かめてみてください。
豆知識:日本でいちばん古い紙にも、美濃の紙が使われています
正倉院に、大宝2年(702年)の戸籍が残っています。日本最古の紙とされるもので、美濃、筑前、豊前の3つの国のものでした。つまり美濃で紙を漉く仕事は、1300年ほど続いていることになります。
手漉きの本美濃紙は、1969年に国の重要無形文化財となり、2014年には、細川紙(埼玉)と石州半紙(島根)とあわせて「和紙 日本の手漉和紙技術」としてユネスコの無形文化遺産に登録されました。折り紙に使われるのは機械で抄いた紙ですが、その漉き方のもとをたどると、この技術に行き着きます。
色の和紙おりがみ|まず、紙を変えてみる
色だけの美濃和紙です。
いつも折っている作品を、そのまま折ってみるのがいちばん分かりやすい。折り目の出方と、角の残り方が変わります。
色数の多いものと、一色を大量に入れたものがあります。いろいろ試すなら前者、同じ作品をたくさん折るなら後者です。
和紙の千代紙|柄と無地が、一緒に入っています
柄の千代紙と、色だけの和紙が組みになったセットです。
柄だけを重ねると、作品によってはうるさく見える。無地が一緒に入っていると、組み合わせて調整できます。
民芸調の柄と、細かい小紋の柄があります。箱や小物入れを折るなら、こちらのほうが仕上がりは華やかです。
3. トーヨー|断裁を、いまも手でやっている
子どものころに使った折り紙は、たいていこの会社のものだったかもしれません。トーヨーは、日本でいちばん長く折り紙を作ってきたメーカーのひとつです。
1971年(昭和46年)から、栃木にある自社工場で作っています。そして、ほとんどの作業が職人の手作業です。工場で働いているのは49名。
20色を同時に裁つとき、ハリが問題になります
工場に届くのは、色の付いた大きなロール状の紙です。これを原反(げんたん)と呼びます。日光で色があせ、湿気で変質するので、保管は厳重です。
原反は、大きなカッター台で切られます。面白いのはここからで、複数の色を同時にカッターにかけることで、色の組み合わせを大まかに作ってしまう。その数、最大20色。
ただし色数が増えるほど、紙のハリを調節する作業が難しくなります。ハリが強いと途中で紙が千切れ、弱いと紙がたるんでサイズが揃わなくなったり、シワができたりする。1章で書いた「ハリ」が、ここでも出てきます。
機械で裁つと、角が揃わない
カッターで作れる色数には限りがあります。そこで、作ったセットを組み合わせて、60色の順番に並べ替える。この作業を帳合(ちょうあい)といいます。
並べ方が独特です。紙を順番どおりに取っていき、直角に立てた金属板の左と奥に紙をぶつけて、端をそろえていく。この帳合は、職人の手作業で行われています。
そして最後が断裁(だんさい)、つまり折り紙のサイズに切り分ける工程です。ここが、この会社のいちばん面白いところだと思います。
機械で断裁を行うと、ずれが生じて角の揃わない不良品ができてしまう。だからトーヨーでは、断裁を手作業で行っています。まず四隅を裁ち、四辺が真っ直ぐにそろってから、商品のサイズに切り分ける。一般的な15cm角なら、断裁前の一枚から12山の折り紙が取れます。
手で裁っているからこそ、断裁の位置が正確でないと成り立たない柄おりがみや、いろいろなサイズの折り紙を出せる。角が揃っている、という当たり前が、人の手で支えられていたわけです。
定番の単色おりがみ|色数で選ぶ
いちばん見慣れた、色だけの折り紙です。
枚数が多く、練習にも向きます。迷ったら15cm角から始めてください。
色数は幅があります。金銀の入ったものもあるので、飾りを折るなら色数の多いほうを選ぶと楽しめます。
柄おりがみ・大きいサイズ|手裁ちだから作れるもの
柄の入った折り紙と、標準より大きい・小さいサイズです。
柄物は、断裁の位置がずれると柄まで傾いて見えます。手で裁っている工場だから並べられる商品です。
大きいサイズは、箱や兜など形のある作品に向きます。小さいサイズは、細かい作品や、豆本のような小物に。
4. いせ辰|桜の版木で、一色ずつ摺る
浮世絵と、同じ摺り方です
東京の谷中に、菊寿堂いせ辰という店があります。創業は1864年(元治元年)。江戸の終わりに、千代紙とおもちゃ絵の版元として神田で始まりました。
ここの千代紙は、木版手摺りで作られています。浮世絵の錦絵と同じ方法で、専門の摺り師が一色ずつ摺っていく。
面白いのが版木です。桜の木を使うのですが、伐ってから20年、30年と寝かせて乾かしたものを使います。湿気で木が伸び縮みすると、色がずれてしまうからです。
紙は、主に愛媛の手漉き奉書紙。いま、木版手摺りの千代紙はとても希少になっています。
探すときは、売り場が違うと思ってください。量販の折り紙コーナーにはまず並びません。谷中の店か、和紙を扱う専門店で、柄を選んで一枚ずつ買うものです。値段も1枚200円ほどから。
豆知識:千代紙は、京都から江戸へ渡ってきました
千代紙のはじまりは、贈り物を包むのに使われた「絵奉書」だといわれます。それが木版摺りの技術と結びついて量産されるようになり、18世紀の後半に、京都から江戸へ伝わりました。
柄の出どころが、それぞれ違います。京都のものは公家の文化や、着物の友禅染の流れを汲んでいます。いっぽう江戸のものは、歌舞伎の演目や役者の紋、縞など、町の暮らしから題材を取りました。同じ千代紙という名前でも、どこの何を写した紙なのかが違うわけです。
5. 選び方|サイズ・厚み・色数
会社が決まったら、見るところは3つです。
① サイズ|迷ったら15cm角
折り紙の標準は15cm角です。折り図の多くがこの寸法で書かれているので、本のとおりに折りたいなら、まずこれを選んでください。
小さいサイズ(7.5cmなど)は、細かい作品や、豆サイズの飾りに。ただし指が入らなくなるので、複雑な折り方には向きません。
大きいサイズは、箱や兜のように形を作るものに向きます。紙が大きいぶん折り目に力が要りますが、そのぶん仕上がりがしっかりします。
② 厚み|細かく折るか、形を保つか
薄い紙は、何度も折り重ねられます。折り数の多い作品では、厚い紙だと最後に膨らんでしまって畳めません。
逆に厚い紙は、折ったあとの形が保てます。箱、器、袋。置いて使うものは、こちらのほうが向きます。
薄くて強い、という組み合わせが和紙の折り紙です。ここが、値段の差になっているところでもあります。
③ 色数|たくさん折るなら、単色の袋も
色数の多いセットは、いろいろ試したいときに向きます。ただし同じ作品をたくさん折るなら、色が足りなくなる。
くすだまのように何十枚も同じ色を使う作品なら、単色をまとめて買うほうが早いです。色ごとの袋入りが売られています。
金銀は、別に用意しておくと便利です。飾りものの折り紙で、一枚あるかないかで印象が変わります。
6. 折ったあとを、どう使うか
折り紙は、折って終わりでも構いません。ただ、紙を選んで折ったものは、そのまま使えることが多いのも確かです。
箱に折って、置いておく
いちばん出番が多いのは小箱です。折り方はいくつもありますが、厚みのある和紙で折ると、角が立って形が保てます。
机の上のクリップ入れ、薬を一日ぶん分けておく皿、料理中の生ゴミ入れ。汚れたら折り直せばいいので、気を使わずに使えます。2章で「容器や袋を折るとパリッと仕上がる」と書いた紙が、ここで効いてきます。
ぽち袋も、一枚の紙から折れます。お年玉や、ちょっとしたお礼を包むときに。柄の千代紙で折ると、それだけで様になります。
折らずに、貼る・飾る
千代紙には、折らない使い道もあります。昔からあるのが貼る使い方で、木の小箱、缶、ノートの表紙。面が平らなものなら、たいてい貼れます。
そのまま飾る人もいます。柄の美しい一枚を額に入れる、あるいは壁に留める。木版で摺られた千代紙は、一枚で絵として成り立ちます。
練習は枚数の多い紙で、仕上げたい一枚だけ紙を変える。これがいちばん現実的な使い分けだと思います。折り方が体に入ってから良い紙を使うと、同じ手順なのに仕上がりが変わるのが分かります。
柄を集めたセット|箱や袋を折るなら
柄が何種類も入った、美濃和紙のセットです。
箱や袋は、折り上がったときに外側へ出る柄で印象が決まります。何種類か手元にあると、包むものに合わせて選べます。
和紙なので、折り目が立って形が保てます。クリップ入れや小物入れのように、置いて使うものに向きます。
7. よくある質問(FAQ)
折り紙と千代紙は、何が違うのですか?
千代紙は、柄の入った紙のことです。折り紙用紙の一種と考えて構いません。
もとは贈り物を包む紙から始まったもので、折るためだけの紙ではありません。箱や小物に貼ったり、そのまま飾ったりする使い方も、昔からあります。
同じ15cm角なのに、値段が違うのはなぜですか?
紙そのものと、手のかけ方が違うためです。和紙の折り紙は、繊維が絡むように漉いてあるので、薄くても切れにくい。柄の千代紙は、木版で一色ずつ摺っているものがあります。
枚数あたりで比べると差は大きく見えますが、折るものによって必要な紙は変わります。練習は枚数の多いもので、仕上げたい一枚だけ紙を変える、という使い分けが現実的です。
連鶴やくすだまには、どの紙がいいですか?
ちぎれにくく、折り目がくっきり出る紙が向きます。連鶴は紙を切り離さずに鶴をつなげる折り方なので、細くつながった部分が破れやすい。くすだまは折り目そのものが形を作ります。
美濃和紙の折り紙は、この2つに向いています。くすだまは同じ色を何十枚も使うので、単色をまとめて用意しておくと足りなくなりません。
つるつるの面とざらざらの面、どちらを表にしますか?
決まりはありません。和紙にはどちらの面もあるので、出したい表情で決めてください。
つるつるの面は色がはっきり出ます。ざらざらの面は光が散って、やわらかい印象。同じ作品を両面で折り比べてみると、違いがよく分かります。
折り紙は、どう保管すればいいですか?
日光と湿気を避けてください。紙は日に当たると色があせ、湿気を吸うと変質します。作っている工場でも、材料の紙は厳重に保管されています。
買った袋のまま、引き出しや箱に入れておくのがいちばん簡単です。立てて挿しておくと反りにくくなります。
子どもにも和紙の折り紙を使わせていいですか?
問題ありません。むしろ力の加減がまだ難しいうちは、切れにくい紙のほうが折り上がります。
ただ枚数を折る時期でもあるので、普段は枚数の多い単色おりがみ、という分け方が現実的です。七夕やお正月など、飾るものを作るときだけ紙を変えるのもいいと思います。
8. まとめ:紙を変えると、折れる形が増えます
折っている途中で紙が切れる、角がずれる。その原因は、腕ではなく紙のことがあります。折り紙用紙は同じ正方形に見えて、繊維の絡み方も、断裁の正確さも、柄の摺り方も違う。
岐阜の古川紙工は、美濃和紙の「流し漉き」で繊維を絡ませた紙を作っています。薄いのにちぎれにくく、折り目がくっきり出る。だから連鶴やくすだまのように、これまで破れて諦めていた折り方が折れるようになります。
栃木のトーヨーは、1971年から自社工場で作り続けています。驚いたのは断裁が手作業だということ。機械で裁つと角が揃わないからだそうです。角が揃っているという当たり前が、人の手で支えられていました。東京谷中のいせ辰は、伐ってから20年、30年寝かせた桜の版木で、摺り師が一色ずつ摺っています。
選ぶときは、まずサイズから。折り図に合わせるなら15cm角です。次に厚みを、細かく折るのか形を保つのかで決める。最後に色数を、何を折るかで選んでください。
紙を一枚変えるだけで、折れるものが増えます。次に折り紙を買うときは、裏の産地や作り方の説明にも目を通して、日本製の紙をぜひ手に取ってみてください。