屠蘇器の選び方|溜塗の盆と三つ組の盃、お屠蘇のつくり方

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元日の朝くらいは、いつもと違う器で、家族と一杯を交わしたい。
そう思ったときに出てくるのが、屠蘇器(とそき)です。銚子と、三つ重ねの盃と、それをのせる台。

屠蘇器は、一年に一度しか出さない器です。そして漆の塗りによっては、出すたびに少しずつ色が変わっていきます。漆器の老舗・山田平安堂は、その様子を「漆器が自分の色に染まっていくような…そんな喜び」と書いています。

この記事では、越前の溜塗の屠蘇器、会津の三つ組の盃、越前の職人が塗った盃台、そしてお屠蘇の土台になる三河の本みりんを紹介します。お屠蘇のつくり方と、年の若い順に飲む作法、お正月のあとのしまい方もまとめました。

【早見表】屠蘇器とお屠蘇、何をそろえる?

そろえるもの 産地・作り手 素材・塗り 見どころ
屠蘇器ひと揃い ▾ 越前漆器(福井・鯖江) 盆:木製・溜塗/盃・銚子:漆塗り 年ごとに溜塗が透けていく
三つ組の盃 ▾ 会津漆器(福島) 木製・漆塗り・手描き蒔絵 扇型に松竹梅、内側は金地
盃台 ▾ あたかや(越前漆器) 木製・朱漆手塗り 全工程を越前の職人が。花台にも
本みりん ▾ 角谷文治郎商店(愛知・碧南) もち米・米こうじ・自社蔵の焼酎 お屠蘇の甘みの土台に

項目を押すと、その解説へ飛べます。お屠蘇のつくり方は4章 ▾へ。

1. 年に一度出すたびに、漆が透けていく

「漆器が自分の色に染まっていく」

1919年創業の漆器店・山田平安堂は、白檀塗(びゃくだんぬり)という技法を説明するなかで、こう書いています。「溜塗りと同じように、経年で下がより透けて見えてくる」。

溜塗や白檀塗は、下の色や箔の上に、透ける漆を重ねて仕上げる塗りです。年月とともに上の漆が透けて、下に塗った色や箔が少しずつ浮かび上がってきます。山田平安堂はその様子を「漆器が自分の色に染まっていくような…そんな喜びがあります」と続けています。

深い飴色の溜塗の盆の表面に、下の朱色がほのかに透けて見える様子を描いた水彩イラスト

一年に一度だから、変化に気づく

毎日使うお椀なら、色の変化は少しずつで気づきにくいものです。屠蘇器は、大晦日に箱から出して、松の内が明けたらまたしまう器。
一年ぶりに箱を開けたとき、「去年より明るくなった」と気づける。家族の背が伸びていくのと同じ時間を、器も重ねていきます。

2. 越前・鯖江:溜塗の盆に、銚子と盃をのせて

盆は、木地に溜塗

福井県鯖江市でつくられた越前漆器の屠蘇器です。商品の説明には「盆は溜塗りです、黒塗りではありません」とあります。

溜塗は、深い飴色の塗り。盆は木製で、そこに漆を塗り重ねています。1章のとおり、溜塗は年月とともに下の色が透けてくる塗りです。毎年この盆を出すたびに、少しずつ色が変わっていくのを楽しめます。

飴色の小判型の盆に、銚子と三つ重ねの盃をのせた屠蘇器ひと揃いを描いた水彩イラスト

越前漆器 屠蘇器 溜 小判型|福井・鯖江

木製の溜塗の盆に、銚子と盃がそろった屠蘇器ひと揃いです。小判型の盆は幅36.2cm、奥行き19.8cm。

盆は木製・漆塗り、盃と銚子は木粉樹脂に漆塗りと、部位ごとに素材が書かれています。飴色の溜塗が、元日の食卓に落ち着いた色を添えます。

越前漆器 屠蘇器 溜 小判型(盆:木製 漆塗り)福井県鯖江市

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3. 三つ重ねの盃を、年の若い順に

盃が三つあるのは、三回に分けて飲むから

京都・伏見の蔵元、山本本家は、お屠蘇の作法をこう紹介しています。「三段重ねの盃で3回に分けて飲む」「年少者から年長者へ順番に盃をすすめる」。

三つの盃で、少しずつ。そして家族のなかで一番年の若い人から盃を受けます。いつもは最後に回ってくる子どもが、元日の朝だけは一番に。屠蘇器は、家族の順番を入れ替える器でもあります。

朱塗りに金の内側の扇型の盃が大中小の三つ重ねになり、朱の盃台にのっている様子を描いた水彩イラスト

会津漆器 三ツ組盃 朱内金地 扇型 松竹梅|福島・会津

木製・漆塗りに、手描きの蒔絵。扇の形をした三つの盃に、松竹梅が描かれています。

外は朱、内側は金地。お屠蘇を注ぐと、金の上に酒が揺れます。化粧箱入りなので、一年しまっておくのにも向いています。

会津漆器 三ツ組盃 2.7 朱内金地 扇型 松竹梅(木製 漆塗り 手描き蒔絵)

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盃台は、越前の職人が全工程を

三つの盃をのせる台です。あたかやは、この盃台の工程を「木地製作→下地→研ぎ→中塗り→研ぎ→手塗り漆塗り」と書き、「全ての工程において、越前漆器産地の腕の良い職人さん達によって製作しています」と添えています。

木に朱漆を手で塗った、シンプルな台。お正月以外は花台や香炉台に使えると、あたかや自身が勧めています。一年じゅう出しておける屠蘇器の一部、というわけです。

あたかや 木製 三組盃用 杯台 朱漆塗り|越前漆器

木地に朱漆を手塗りした、三つ組の盃のための台です。12cm角、高さ2.8cm。

手持ちの盃と組み合わせて、屠蘇器を自分でそろえることもできます。お正月が過ぎたら、小さな花を活けた器の台に。

あたかや 木製 三組盃用 杯台 朱漆塗り(越前漆器)

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豆知識:「お屠蘇気分」は、みんなで飲んだから

お正月の浮かれた気分を「お屠蘇気分」といいます。山本本家によると、下働きの少年(丁稚や小僧)まで集まって、お屠蘇を飲む祝い事が広まったことから、この言葉が生まれたそうです。
家族も、働く人も、一番若い人から順に同じ酒を飲む。屠蘇器を囲む時間そのものが、「お屠蘇気分」の正体だったのかもしれません。

4. お屠蘇は、清酒と本みりんで一晩

大晦日の夜に浸して、元旦の朝に引き上げる

蔵元の金井酒造店は、つくり方をこう説明しています。「大晦日の夜、屠蘇散の袋を清酒と本みりんに浸す。一晩(5〜8時間ほど)置いて、生薬の香りと風味を移す。元旦の朝、袋を取り出していただく。」

分量の目安は、山本本家によると合わせた酒300mlに屠蘇散を一包。甘めが好きなら本みりんを多めに、すっきりさせたいなら清酒を多めに。清酒とみりんを同量から、清酒2:みりん1くらいのあいだで、家の好みを探します。

ガラスの器に注いだ酒の中に、白い小さな布袋が浸されている夜の台所を描いた水彩イラスト

甘みの土台になるのは、本みりん

金井酒造店は「みりんは「本みりん」を選ぶこと(みりん風調味料とは別物で、本みりんは酒類)」と書いています。
愛知・碧南の角谷文治郎商店の三州三河みりんは、国産のもち米、愛知県産米の米こうじ、自社の蔵で造った本格焼酎で仕込む本みりんです。お屠蘇の甘みを、この一本に任せます。

角谷文治郎商店 三州三河みりん 700ml|愛知・碧南

もち米と米こうじと、自社蔵の焼酎。米だけで仕込んだ本みりんです。

お屠蘇の甘みに、そのまま。お正月が過ぎても、煮物や照り焼きでいつもの台所に戻ってきます。

角谷文治郎商店 三州三河みりん 700ml

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屠蘇散は、どこで買える?

屠蘇散は、山本本家によると酒屋やスーパー、ドラッグストアなどで手に入ります。中身の生薬は製品によって違うので、袋の表示を見て選ぶのがよいそうです。
漬けすぎると濁りや沈殿が出ることがあるので、5〜8時間を目安に様子を見ながら引き上げてください。

5. 屠蘇器を選ぶ前に、確かめておくこと

飴色の溜塗、朱塗り、黒塗りの三つの漆の盃台を並べて、色の違いを見比べられるように描いた水彩イラスト
飴色の溜、朱、黒。漆の色で、元日の食卓の景色が変わります。

① 材質の欄を、部位ごとに読む

屠蘇器は、盆・銚子・盃・盃台で素材が違うことがよくあります。2章の屠蘇器も「盆/木製 漆塗り 盃・銚子/木粉樹脂 漆塗り」と分けて書かれていました。
木地の器がほしい部分はどこかを決めてから、商品ページの材質の欄を読むと、選びやすくなります。

② ひと揃いか、少しずつそろえるか

最初からひと揃いで迎えるなら、2章のような屠蘇器。盃と台を別々に選んで組み合わせるなら、3章の会津の盃と越前の盃台のように、産地をまたいでそろえることもできます。手持ちの銚子や徳利を生かす方法もあります。

③ 溜か、朱か、黒か

年ごとの色の変化を楽しみたいなら、溜塗。おめでたい華やかさなら朱。おせちの重箱と並べたときに、色がぶつからないかも考えておくと安心です。

6. 松の内が明けたら、こうしまう

洗って、拭いて、布に包んで箱へ

山田平安堂のお手入れの案内によると、漆器は柔らかいスポンジと食器用の中性洗剤、ぬるま湯で洗えます。熱湯は変色のおそれがあるので避けます。洗ったあとは乾拭き。漆の光沢を保つためにすすめられています。

長くしまうときは、直射日光の当たらない場所で、箱に入れ、柔らかい布で包む。著しい乾燥や湿気も避けて。来年の大晦日まで、ここで一年を過ごします。

漆の盃を柔らかい白い布で包み、木箱に収めようとしている様子を描いた水彩イラスト

7. よくある質問(FAQ)

お屠蘇はどうやってつくりますか?

大晦日の夜、屠蘇散を清酒と本みりんに浸し、元旦の朝に引き上げます。
目安は合わせた酒300mlに屠蘇散一包、浸す時間は5〜8時間ほど。清酒とみりんの割合は、同量から清酒2:みりん1くらいで好みに合わせます。

お屠蘇は、誰から飲みますか?

一般には、年少者から年長者へ順にすすめるとされています。
三段重ねの盃で、3回に分けて飲む作法も伝わっています。地域や家によって違いがあるので、家の習わしがあればそちらを大切にしてください。

みりんは、料理用のものでもいいですか?

本みりんを選びます。
蔵元の金井酒造店は、みりん風調味料とは別物で、本みりんは酒類だと書いています。ラベルの「本みりん」の表示を確かめてください。

溜塗の色は、本当に変わりますか?

年月とともに、上の漆が透けて下の色が見えてくるとされています。
山田平安堂は、白檀塗について「溜塗りと同じように、経年で下がより透けて見えてくる」と説明しています。変わり方は、しまう場所や使い方によっても違います。

屠蘇器は、お正月以外にも使えますか?

盃台や盃は、ほかの場面でも使えます。
あたかやは、朱漆の盃台を花台や香炉台としても勧めています。ぬりもの屋も、朱の銚子を「お正月・婚礼・結納等の際の大切なお道具」と紹介しています。

漆の屠蘇器は、どうしまえばいいですか?

ぬるま湯と中性洗剤で洗って乾拭きし、布で包んで箱にしまいます。
直射日光の当たらない、著しい乾燥や湿気のない場所に保管します。熱湯や研磨剤入りの洗剤は避けてください。

8. まとめ:毎年出すたびに、器も年を重ねる

飴色の溜塗の屠蘇器、三つ重ねの朱の盃、本みりんの瓶を縦に並べた、お屠蘇のまとめイラスト

屠蘇器は、一年に一度しか出さない器です。溜塗の漆は、年月とともに下の色が透けてきます。山田平安堂の言葉を借りれば、「漆器が自分の色に染まっていくような」器です。

ひと揃いで迎えるなら、越前・鯖江の溜塗の屠蘇器。盆は木地に溜塗です。

盃を選ぶなら、会津の三ツ組盃。木製・漆塗りに手描きの松竹梅。台は、越前の職人が全工程を手がけた朱漆の盃台。

お屠蘇は、大晦日の夜に屠蘇散を清酒と本みりんに浸して、元旦の朝に。甘みの土台は、碧南の三州三河みりん。そして、一番若い人から三つの盃で。

今年のお正月は、ぜひ日本の漆の屠蘇器を出してみてください。溜塗の盆なら、来年また箱を開けたとき、色が少し変わっているかもしれません。

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