買った日がいちばん美しい器と、使うほどに自分の色になっていく器があります。
山口県の萩焼は、後者の代表です。やわらかな土が少しずつお茶を吸い、何年もかけて色が変わっていく。焼き物を知る人は、それを「萩の七化け」と呼びます。
栃木県の益子焼は、江戸の台所で使われた日用品から始まった、ぽってりと素朴な土の器です。この記事では、萩の泉流山と勝景庵、益子最大の窯元つかもとの器を、手入れの仕方とあわせて紹介します。
【早見表】萩焼と益子焼、どちらを選ぶ?
| 萩焼(山口) | 益子焼(栃木) | |
|---|---|---|
| 土と肌 | やわらかな土味、吸水性が高い | 落ち着いた艶の素朴な肌 |
| 楽しみ | 使うほど色が変わる「七化け」 | 柿釉・糠白釉など釉の色 |
| 紹介する窯元 | 泉流山・勝景庵 ▾ | つかもと ▾ |
| 手入れ | 使う前に水を含ませ、手洗い ▾ | つかもとの器は食洗機・電子レンジ可 |
窯元名を押すと、その解説へ飛べます。
1. 萩焼は、使うほど色が変わる
「萩の七化け」
伝統的工芸品産業振興協会によると、萩焼の大きな特徴は「焼き締まりの少ない柔らかな土味と、高い吸水性」です。表面の釉に入った貫入(細かなヒビ)の隙間から、お茶やお酒が少しずつしみ込みます。
「澄んだ色味の初々しい茶わんが、何年も使ううちに落ち着いた渋い雰囲気の茶わんに変る」。焼き物を知る人は、それを「萩の七化け」と呼びます。茶の湯の世界では「茶馴れ」と呼んで愛でてきました。
絵を描かず、土と炎に任せる
萩焼には、ほとんどの場合、絵付けをしません。土の配合、釉薬のかけ具合、へら目。それらが窯の中でどんな表情になるかを見越して、器をつくります。
土は、大道土・金峯土・見島土の3つが基本。そこに窯元の所在地の土を混ぜて、それぞれの土味を出すこともあります。
2. 萩の窯元:泉流山と勝景庵
文政9年の泉流山、200年続く勝景庵
泉流山は、文政9年に創窯した萩の窯元です。先代は文化功労者の吉賀大眉。土づくりや釉薬の調合から自分たちで手がけ、蹴ろくろと登り窯を使って、昔ながらのやさしい雰囲気の萩焼をつくっています。
勝景庵は、萩の山奥にある、200年以上続く窯元です。8代目の兼田佳炎さんと息子の知明さんが、親子で登り窯を焚いています。
泉流山 萩焼 ごはん茶碗ペア|山口・萩市(ふるさと納税)
毎日ご飯をよそって、ふたりで育てていく茶碗です。口径11.5cm、高さ6cmが2個。
萩市のふるさと納税の返礼品で、事業者は泉流山です。手づくりなので、焼き上がりの色や形は一つずつ違います。
泉流山 萩焼 ごはん茶碗ペア(萩市ふるさと納税)
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勝景庵 8代佳炎作 見島湯呑 大|山口・萩市(ふるさと納税)
8代目・兼田佳炎さんの湯呑です。径7.5cm、高さ9.5cm。木箱に入っています。
萩焼の基本の土の一つ、「見島」の名がついた湯呑。毎日のお茶で、少しずつ色の変化を楽しめます。
勝景庵 萩焼 8代佳炎作 見島湯呑 大(萩市ふるさと納税)
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豆知識:400年受け継がれる名前「坂高麗左衛門」
萩焼の始まりは400年前。毛利輝元が朝鮮半島から陶工の李勺光と李敬の兄弟を伴って帰国し、李勺光が萩で御用品を焼く窯を開いたことからです。
李勺光の死後、窯を継いだ李敬は、藩主から「坂高麗左衛門」の名を受けました。その名は、いまも受け継がれています。
3. 萩焼を育てる:使う前に水、使ったら手洗い
扱い方で、しみ込み方が変わる
伝統的工芸品産業振興協会は、萩焼の基本の扱い方をこう紹介しています。「使う前に器に充分に水を含ませ、使用後は手でよく水洗いをして自然乾燥で完全に水分をとばす」。
色のしみ込み方は、使い手の扱い方によってずいぶん違います。そして風合いをよくするのにいちばん大切なのは、使い続けることだそうです。
しまい込むと、萩焼は「死んでしまう」
協会のページには、こんな言葉が紹介されています。「いくら立派な茶わんだからといって、大切にしすぎて使わなければ死んでしまう」。
きちんと手入れをして、毎日使う。そうすれば萩焼は「七つ」どころか無限に変わる表情を見せてくれる、と。萩焼は、戸棚に飾るより、毎朝のお茶に使う器です。
4. 益子焼:江戸の台所から始まった土の器
日用品の産地に、濱田庄司がやってきた
益子焼は19世紀の中頃、笠間焼の影響を受けて始まりました。初期は藩の援助を受けて日用品を焼き、それが江戸の台所で使われていたそうです。
大正13年から益子で作家活動を始めた陶芸家の濱田庄司は、益子の陶工たちに大きな影響を与えました。いまの益子焼の、食卓の器や花を生ける器は、そこから生まれています。
柿釉、黒釉、糠白釉
協会は益子焼を「落ち着いた艶のある素朴な焼き物」と紹介しています。白い泥を刷毛で塗る刷毛目、鉋で削って凹凸をつける飛び鉋。そして多くの釉薬。柿釉や黒釉、ワラや木や糠の灰を使った糠白釉などが、益子らしい味わいを出しています。
つかもと 益子焼 3.8寸丸鉢 益子伝統釉|栃木・益子町
益子の伝統的な釉で仕上げた、やや厚手で丸みのある取り鉢です。口径11.7cm、高さ5cm。
食洗機・電子レンジが使えます(オーブンは不可)。煮物、和え物、サラダ、毎日の取り分けに。
つかもと 益子焼 3.8寸丸鉢 益子伝統釉
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つかもと 益子焼 コーヒーカップ&ソーサー 益子伝統釉|栃木・益子町
ゆず肌黒釉、益子青磁釉、糠白釉、呉須など、益子の伝統釉から選べます。カップは180ml。
適度な厚みと持ちやすい取っ手。食洗機・電子レンジ可で、毎日のコーヒーに気兼ねなく使えます。
つかもと 益子焼 コーヒーカップ&ソーサー 益子伝統釉
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5. つかもと:1864年からの窯元と、駅弁の釜
横川駅の駅弁の釜をつくった窯元
つかもとは、1864年に初代・塚本利平が益子の深田に窯を築いたのが始まりです。160年あまり続く益子焼の窯元で、沿革には1957年「横川駅・駅弁容器(釜)製造着手」とあります。釜をつくってきた窯元です。
いまのつかもとのロゴは、人間国宝の染色家・芹沢銈介によるもの。益子に住んで作陶を続けた濱田庄司を介して何度か足を運び、その縁で引き受けたそうです。
つかもと 益子焼 Kamacco(かまっこ)1合炊き 黒釉|栃木・益子町(ふるさと納税)
釜をつくってきた窯元の、1合炊きの土釜です。直径14cm、高さ12.5cm。ひとり分のご飯を炊いて、そのまま食卓へ。
益子町のふるさと納税の返礼品で、製造者はつかもと。成形も施釉も一つずつ手作業なので、届くまで時間がかかることがあります。
つかもと 益子焼 Kamacco(かまっこ)土鍋 1合炊き 黒釉(益子町ふるさと納税)
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豆知識:秋の益子陶器市は11月3日前後
益子の陶器市は1966年(昭和41年)から続く催しで、春のゴールデンウイークと、秋の11月3日前後に開かれます。
販売店約50店舗に、約500のテント。春と秋あわせて約50万人が訪れ、新進作家や窯元の職人と直接話しながら器を選べます。
6. 育てる器か、気兼ねなく使う器か
① 器の変化を楽しみたいなら、萩焼
何年もかけて、自分だけの色に育てたい。そう思うなら萩焼です。毎朝のお茶を萩の湯呑で、毎日のご飯を萩の茶碗で。使う前に水を含ませ、使ったら手で洗って自然に乾かす。その手間ごと、器との時間になります。
② 毎日がしがし使うなら、益子焼
食洗機や電子レンジを気にせず使いたいなら、益子焼のつかもとの器。丸鉢もカップも、食洗機・電子レンジが使えると表示されています。販売店は丸鉢を「適度な重みと持ちやすさを考えた取鉢」と紹介しています。
7. よくある質問(FAQ)
「萩の七化け」とは何ですか?
萩焼が、使ううちに色や表情を変えていくことです。
やわらかく吸水性の高い土で、釉の貫入からお茶やお酒がしみ込むため、何年も使ううちに落ち着いた渋い色に変わります。茶の湯の世界では「茶馴れ」と呼ばれます。
萩焼は、使う前にどうすればいいですか?
使う前に、器に充分に水を含ませます。
伝統的工芸品産業振興協会は、使用後は手でよく水洗いし、自然乾燥で完全に水分をとばす扱い方を紹介しています。
萩焼に色がしみるのは、不良ではないのですか?
不良ではなく、萩焼の楽しみです。
しみ込んだ色は貫入を地紋のように見せ、面白みのある表情をつくります。焼き物を知る人は、その変化を「萩の七化け」として愛でてきました。
益子焼の特徴は何ですか?
益子の土と釉が生む、落ち着いた艶のある素朴な焼き物です。
柿釉、黒釉、糠白釉などの釉や、刷毛目、飛び鉋といった技法が使われます。
益子焼は食洗機や電子レンジで使えますか?
器によって違います。
この記事で紹介したつかもとの丸鉢とカップ&ソーサーは、食洗機・電子レンジ可と表示されています。それぞれの表示を確かめてください。
益子の陶器市はいつですか?
春のゴールデンウイークと、秋の11月3日前後です。
1966年から続き、春秋あわせて約50万人が訪れます。
8. まとめ:育つ萩、ぽってり益子
萩焼は、やわらかな土がお茶を吸い、何年もかけて色を変えていく「萩の七化け」の器。文政9年創窯の泉流山、200年続く勝景庵の器は、使い続けるほど自分の色になっていきます。
益子焼は、江戸の台所の日用品から始まった、ぽってりと素朴な土の器。1864年から続くつかもとは、横川駅の駅弁の釜もつくってきた窯元です。
育てる器か、気兼ねなく使う器か。どちらも、しまい込まずに毎日使ってこそ、土の器の良さがわかります。