和傘は、雨の日に差せるのでしょうか。
答えは、差せます。京都の京和傘の老舗・日吉屋は、「番傘、蛇の目傘、羽二重などは、雨の日でも実際に使えます」と書いています。
竹を割って骨を組み、和紙を張り、油を引いて雨をはじく。和傘は、江戸時代からほとんど変わらない材料と作り方で、いまも作られている使うための道具です。開くと、竹の骨が放射状に広がり、和紙越しに光が透けて見えます。
この記事では、京和傘の技法を継ぐ京都の日吉屋と、2022年に国の伝統的工芸品になった岐阜和傘から、蛇の目傘と日傘、そして和傘の技術から生まれた照明まで、日本製の和傘を4つ紹介します。
【早見表】日本製の和傘4選
| 和傘 | 作り手・産地 | 雨の日 | 骨の数・大きさ |
|---|---|---|---|
| 京和傘 蛇の目傘 中入 ▾ | 日吉屋(京都) | ◎ 晴雨兼用 | 直径116cm |
| 岐阜和傘 蛇の目傘 月奴 ▾ | 仐日和(岐阜) | ◎ 雨傘 | 46本骨・約520g |
| 岐阜和傘 黒染め骨日傘 ▾ | マルト藤沢商店(岐阜) | ✕ 日傘(油を引いていない) | 40本骨・継柄 |
| 照明 古都里 HG ▾ | 日吉屋(京都) | ―(室内の照明) | 直径約39cm |
和傘の名前を押すと、その解説へ飛べます。
1. 和傘は、雨の日に差せる道具です
江戸時代から、ほとんど変わらない作り方
日吉屋は、自社の和傘についてこう書いています。「江戸時代からほとんど変わらぬ材料、製法で作られていますので、番傘、蛇の目傘、羽二重などは、雨の日でも実際に使えます」。
岐阜県の資料も、岐阜和傘は良質の竹、美濃和紙、エゴマ油といった傘づくりの材料が豊かな土地で発展してきたと紹介しています。竹の骨に和紙を張り、油を引いた和紙が雨をはじきます。
洋傘とはまったく違う姿をしています。開くと、細く割った竹の骨が何十本も放射状に広がり、和紙を通した光が傘の内側を照らします。差している本人だけが見られる景色です。
2. 京都の日吉屋|京和傘の技法を継ぐ工房
160年以上、京和傘を作り続けてきた
日吉屋は、江戸時代後期に創業した京和傘の老舗です。公式サイトには、創業から160年以上、伝統の技を受け継いで京和傘を作り続け、代々受け継がれてきた「京和傘」の技法を継承する唯一の工房だと書かれています。
いまも番傘、蛇の目傘、野点傘などの和傘を作り、寺社や伝統行事で使われる和傘の修復も手がけています。
豆知識:廃業寸前から、15か国へ
日吉屋の公式サイトには、和傘の需要が激減し、一時は廃業寸前だったと正直に書かれています。2003年に五代目となった西堀耕太郎さんのもとで、和傘の技術を照明やインテリアに広げ、15か国以上に展開してきました。
伝統を守りながら、作るものを広げる。その積み重ねが、いまも京和傘が作られ続けている理由です。
日吉屋 京和傘 蛇の目傘 中入(赤白)|晴れの日も雨の日も
舞妓さんにも愛用されている、京都の蛇の目傘。
直径116cm×高さ73cm。晴雨兼用です。雨風の強さに応じて開き具合を二段階に調節できる金属製のハジキがあり、手元は天然の藤巻き、石突は真鍮で仕上げてあります。
開いたとき、赤と白の「中入」の色分けが浮かび上がります。和服で出かける日に、雨を楽しみにさせてくれる一本です。
日吉屋 京和傘 蛇の目傘 中入(赤白)
商品情報を読み込み中…
3. 岐阜和傘|2022年に、国の伝統的工芸品に
加納藩の城下で育った傘づくり
岐阜和傘は、2022年(令和4年)3月18日に、経済産業大臣から国の伝統的工芸品に指定されました。岐阜県の資料によれば、竹・美濃和紙・エゴマ油といった材料が豊かな土地で、江戸時代の加納藩の領地だったころに発展してきた傘づくりです。
岐阜県は、岐阜和傘の特徴を、畳むと細く収まる「細物」と紹介しています。開くと大きく、閉じると細い。持ち歩く道具としての美しさです。
和傘ブランド「仐日和(かさびより)」代表の河合幹子さんは、和傘職人だった祖母の手仕事を見て育ち、老舗の和傘問屋を営む叔父に誘われて職人の道に入りました。かつて分業だった工程のほとんどを、いまは一人で手がけています(岐阜県観光連盟の記事より)。
豆知識:600軒の問屋が、いまは3軒
岐阜県観光連盟と岐阜新聞社の記事によれば、岐阜和傘の最盛期だった1950年ごろには600軒以上の問屋があり、月に120万〜130万本が作られていました。いま稼働している問屋は3軒だけです。
同じ記事には、和傘づくりの工程は細かく分けると100近くあり、かつては10人以上の職人の分業で一本が作られていたとあります。
岐阜和傘 蛇の目傘 月奴(黒×柿渋)|仐日和の、手作りの46本骨
黒と柿渋の和紙を、月の形に張り分けた蛇の目傘。
岐阜市の仐日和(かさびより)の製作で、46本骨、全長約74cm、重さ約520g。柿渋の和紙は、美濃和紙の職人が1枚1枚染めています。黒い和紙も、この傘のために色を合わせた特別なものです。
岐阜市のふるさと納税の返礼品で、受注生産です。届くまで時間がかかりますが、そのぶん一本ずつ手で作られています。
岐阜和傘 蛇の目傘 月奴(黒×柿渋)(ふるさと納税・岐阜市)
商品情報を読み込み中…
岐阜和傘 日傘 黒染め骨日傘 軒赤|マルト藤沢商店の、大人の日傘
黒く染めた竹骨に黒の和紙、縁に赤を差した日傘。
岐阜市のマルト藤沢商店の作。40本骨で、和紙は機械漉きの美濃和紙。持ち手は真鍮で継ぐ継柄なので、持ち運びにも便利です。男性が差しても似合う日傘です。
和紙に油を引いていないので、雨の日には使えません。夏の日差しの下で、和紙を通したやわらかな影を楽しむ傘です。岐阜市のふるさと納税の返礼品です。
岐阜和傘 日傘 黒染め骨日傘 軒赤(マルト藤沢商店・ふるさと納税)
商品情報を読み込み中…
4. 雨傘と日傘|油を引くか、引かないか
買う前に、雨傘か日傘かを確かめる
和傘には、雨の日に差す雨傘と、日差しをよける日傘があります。日吉屋は、番傘・蛇の目傘・羽二重などの雨傘は「防水してあり、雨の日に使用します」と書いています。一方、マルト藤沢商店の日傘は「和紙に油は引いておりませんので、雨天では使用できません」。
見た目が似ていても、雨の日に差せるかどうかは、和紙に油を引いているかどうかで決まります。商品の説明で「雨傘」「晴雨兼用」「日傘」のどれかを、必ず確かめましょう。
骨の数は、傘の表情
和傘の骨の数は、この記事の傘でも40本、44本、46本と違います。開いたときに放射状に並ぶ竹の骨の数も、傘の表情の一部です。売り場では、骨の数も見比べてみてください。
5. 和傘の技術を、部屋の明かりに
開いて閉じる、和傘の照明
日吉屋は、和傘の技術をデザイン照明にも生かしています。「古都里-KOTORI-」は、和傘のように開閉できる照明。ハイグレードシリーズは、京都産の真竹と手漉きの和紙を使っています。
竹骨は一本の竹を丁寧に割いて作ったもの。灯りをともすと、和紙越しに竹の骨が浮かび上がります。雨の日に傘を差さなくても、和傘の美しさを毎日見られる道具です。
日吉屋 照明 古都里-KOTORI- HGペンダント(山吹色)|京和傘の技で作る明かり
和傘の骨と和紙が、食卓の上で灯る。
直径約39cm(388mm)。京都産の真竹と手漉き和紙のハイグレードモデルで、竹の素材感が時間とともに移り変わっていく様子も楽しめます。
和傘を差す機会がない人にも、京和傘の技を暮らしに迎えられる一品です。
日吉屋 照明 古都里-KOTORI- HGペンダント(山吹色)
商品情報を読み込み中…
6. 和傘を長く使うために
作った工房が、直してくれる
和傘は、壊れても直せる道具です。日吉屋は、和傘の製造だけでなく、修理や特注も受け付けています。寺社や伝統行事で使われる和傘の修復も手がけている工房です。
和紙や竹は、使うほどに風合いが変わっていきます。岐阜和傘の仐日和も、和傘が飴色に変わっていく経年変化を楽しみのひとつとして紹介しています。新しいうちの色と、使い込んだ色。どちらも和傘の楽しみです。使ったあとの扱いや保管のしかたは、届いたときの作り手の案内に従いましょう。
7. よくある質問(FAQ)
和傘は、雨の日に使えますか?
雨傘として作られた和傘なら、雨の日に使えます。日吉屋は、番傘・蛇の目傘・羽二重などは雨の日でも実際に使えると書いています。ただし日傘として作られた和傘は、和紙に油を引いていないので雨天では使えません。
蛇の目傘と番傘は、何が違いますか?
どちらも雨の日に差せる和傘です。日吉屋は蛇の目傘を、艶やかな色の和紙が華奢な竹骨に映える傘として紹介していて、舞妓さんにも愛用されているそうです。日吉屋は番傘・蛇の目傘・羽二重のいずれも雨の日に使える雨傘として作っています。
岐阜和傘とは何ですか?
岐阜で作られる和傘で、2022年3月18日に国の伝統的工芸品に指定されました。竹・美濃和紙・エゴマ油といった材料が豊かな土地で、江戸時代の加納藩の領地だったころに発展してきました。畳むと細く収まる「細物」が特徴です。
和傘は修理できますか?
作り手によっては修理を受け付けています。京都の日吉屋は、和傘や提灯の製造のほか、修理や特注の相談にも応じています。
和傘の日傘は、普段使いできますか?
晴れた日の日傘として使えます。マルト藤沢商店の日傘は、持ち手を継いで短くできる継柄で、持ち運びにも便利です。和紙に油を引いていないので、雨の日は洋傘と使い分けましょう。
和傘を持っていなくても、和傘の技術を楽しめますか?
和傘の技術で作られた照明があります。日吉屋の「古都里-KOTORI-」は、京都産の真竹と手漉き和紙を使い、和傘のように開閉できるペンダント照明です。
8. まとめ:雨の日を、待ち遠しくする傘
和傘は、雨の日に差せる道具です。竹と和紙と油。江戸時代からほとんど変わらない材料と作り方で、いまも作られています。
京和傘の技法を継ぐ京都の日吉屋の蛇の目傘。2022年に国の伝統的工芸品になった岐阜和傘の、仐日和の蛇の目傘と、マルト藤沢商店の日傘。そして、和傘の技術から生まれた照明。どれも、和傘の手仕事を次の世代へつなごうとする日本の作り手のものです。
雨の日に和傘を開くと、竹の骨と和紙越しの光が、頭の上に広がります。雨の日が少し待ち遠しくなる一本を、ぜひ手に取ってみてください。