急な雨で買ったコンビニのビニール傘。
とりあえず濡れなければいいと使い捨てて、家の玄関に何本も溜まっていませんか?
スーツや靴にはこだわるのに、傘だけが間に合わせ。
それではせっかくの装いが台無しになってしまいます。
大人の嗜みとして一本持っておきたいのが、職人が作る「日本製の高級傘」です。
傘を開いた時の「バサッ」という重厚な音。
頭上で雨粒が弾ける、バラバラという心地よい響き。
そして何より、修理しながら10年、20年と使い続けられるという安心感。
この記事では、皇室御用達の「前原光榮商店」をはじめ、雨の日が待ち遠しくなるような、一生モノの日本の傘を紹介します。
特集: この記事は「身につける日本の名品」シリーズの第6回です。
1. なぜ「傘」にこだわるのか?|雨の音が変わり、背筋が伸びる道具
良い傘を持つことは、単なるステータスではありません。雨の日の「体験」そのものが変わります。
生地の張りが生む、美しい雨音
安価な傘と高級傘の決定的な違いは、生地の「張り」にあります。
熟練の職人が骨に合わせて限界まで強く生地を張るため、雨粒が当たった時に太鼓のようにポンポンと軽快な音が響きます。
この音を聞きながら歩く時間は、憂鬱な雨の移動時間を、豊かな思索の時間に変えてくれます。
また、ピンと張られた美しいフォルムは、さしている人の背筋を自然と伸ばしてくれます。
2. 骨の数と素材で選ぶ|美しい円形を描く「16本骨」とカーボンの軽さ
傘の骨(親骨)の数は、見た目の美しさと丈夫さに直結します。
和傘のような美しさ「16本骨」
一般的な傘は8本骨ですが、高級傘の代名詞とも言えるのが「16本骨」です。
骨の数が多いことで、開いた時に限りなく「円」に近い形になります。
これにより、雨風を受け流す強度が上がり、見た目にも和傘のような優美な雰囲気が生まれます。
少し重くなりますが、最近は軽量なカーボン骨を使うことで、女性でも楽に持てる16本骨が増えています。
3. 生地の織り方|表と裏の色が違う「甲州織」の立体感と撥水性
日本の高級傘に使われる生地の多くは、山梨県の伝統織物「甲州織(こうしゅうおり)」です。
糸を先に染めるから、色が深く、ハゲない
プリント生地ではなく、糸を染めてから織り上げる「先染めジャカード織り」が特徴です。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の色を変えることで、表と裏で違う色に見える「リバーシブル」や、見る角度によって光沢が変わる「玉虫色」を表現できます。
高密度に織り込まれているため、撥水加工だけに頼らずとも雨を弾き、UVカット効果も高いのが魅力です。
4. おすすめ高級傘ブランド①:前原光榮商店|皇室御用達の最高傑作
昭和23年創業。皇室をはじめ、数多くの著名人に愛される、日本の洋傘界のトップブランドです。
前原光榮商店(まえはらこうえいしょうてん)
16本骨傘のパイオニア。手元(ハンドル)まで美しい。
「傘はファッションの一部」という理念のもと、昔ながらの製法を守り続けています。
生地を織る、骨を組む、手元を作る、生地を張る。この4つの工程をそれぞれの専門職人が担当する完全分業制。
特に、楓(かえで)や寒竹(かんちく)などの天然木を使った手元は、使い込むほどに手に馴染み、ステッキのような風格があります。
修理体制も万全で、まさに一生モノと呼ぶにふさわしい一本です。

5. おすすめ高級傘ブランド②:小宮商店|東京の下町で継承される洋傘
昭和5年創業。東京・東日本橋で、職人の手仕事による傘作りを続ける老舗です。
小宮商店(こみやしょうてん) 甲州織「かさね」
表と裏の色の重なりを楽しむ「かさね」シリーズ。
小宮商店の代表作「かさね」は、甲州織の特徴を活かし、表と裏で異なる色を織り出したシリーズです。
傘をさした時、内側の明るい色が顔色を明るく見せてくれる効果もあります。
職人が手作業で「ダボ(骨の継ぎ目)」を生地で包んで保護するなど、見えない部分まで丁寧に作られており、開閉の滑らかさは感動的です。
6. 使用後の作法とお手入れ|「開いて干す」が鉄則。撥水力の戻し方
良い傘をダメにする一番の原因は、濡れたまま放置することによる「錆び」と「カビ」です。
必ず「陰干し」で全開にする
帰宅したら、必ず傘を全開にして、直射日光の当たらない場所で陰干ししてください。
ベルトで留めたまま乾かすのはNGです。内側に湿気がこもり、骨が錆びたり、生地が変色したりします。
【撥水力が落ちてきたら?】
ドライヤーの温風を当ててください。
撥水加工(フッ素樹脂)は熱を加えると分子の並びが整い、機能が回復する性質があります。
生地から数センチ離して、温風を全体に当てるだけで、水弾きが復活します。
7. よくある質問(FAQ)|骨が折れた時の修理や、置き忘れ対策
骨が折れたり曲がったりしたら修理できますか?
はい、前原光榮商店や小宮商店などの日本製傘は修理可能です。
骨の交換、手元の交換、生地の張り替えなど、ほとんどの修理に対応しています。
「親から受け継いだ傘を修理して使う」という方も多くいらっしゃいます。
(※他社製品や、部品がない古いモデルは修理できない場合もあります)
高級傘を買っても、置き忘れてしまいそうで怖いです。
不思議なことに、良い傘を持つと置き忘れなくなります。
ビニール傘は「なくなってもいい」という意識が働きますが、愛着のある傘は「相棒」として意識するようになるからです。
心配な方は、手元(ハンドル)にネームプレートを付けたり、目印になるタッセルを付けるのがおすすめです。
男性用と女性用の違いは?
主にサイズ(親骨の長さ)と重さです。
男性用は60cm〜65cm、女性用は55cm〜60cmが一般的です。
また、女性用は持ち運びやすさを考慮して、軽量なカーボン骨や細身の手元が使われることが多いですが、大判が好みの女性が男性用を使うこともあります。
折りたたみ傘と長傘、最初の一本はどっち?
高級傘の良さを味わうなら、まずは「長傘」がおすすめです。
長傘の方が骨の構造が美しく、生地の張りも強いため、雨音やシルエットをより楽しめます。
折りたたみ傘は、あくまで予備としての機能性を優先した構造だからです。
傘を杖代わりにして歩いてもいいですか?
絶対にやめてください。
傘は縦方向の荷重に耐えるように作られていません。
杖代わりにすると、中棒(シャフト)が曲がったり、先端が破損したりする原因になります。
あくまで「雨具」として優しく扱ってください。
まとめ:雨の日が待ち遠しくなる、一生モノの傘
「いい傘を買うと、雨が降るのが楽しみになる」
これは、高級傘を手にした人が口を揃えて言う言葉です。
玄関を出て傘を開いた瞬間の、手に伝わる確かな感触。
雨粒を弾く小気味よい音。
ショーウィンドウに映る、傘をさした自分の凛とした姿。
それらはすべて、憂鬱な雨の日を「特別な日」に変えてくれる魔法です。
一生付き合える一本を手に入れて、雨の日の外出を楽しんでみませんか。





