招き猫といえば、丸い顔に大きな目、小判を抱えたずんぐりの姿。
ところがその顔は、昭和20年代の常滑で生まれた、わりと新しい顔です。それより前の常滑の招き猫は、本物の猫に近いシュッとした体形だったそうです。
愛知県には、招き猫の二大産地があります。丸顔の常滑と、明治から続くすらりとした猫背の瀬戸。
この記事では、常滑の梅月冨本人形園と、瀬戸の中外陶園の招き猫を紹介します。右手と左手の違い、色にこめられた願い、二つの町で会える招き猫もまとめました。
【早見表】常滑の招き猫と、瀬戸の招き猫
| 産地・作り手 | 顔と姿 | 生まれた時代 | やきもの |
|---|---|---|---|
| 常滑・梅月冨本人形園 ▾ | 丸い顔、大きな目、二頭身。小判をがっちり | 昭和20年代 | 陶器 |
| 瀬戸・中外陶園 ▾ | すらりとした猫背の古瀬戸型 | 明治30年代後半 | 磁器 |
作り手の名前を押すと、その解説へ飛べます。右手と左手の違いは4章 ▾へ。
1. 丸い顔は、昭和20年代の常滑で生まれた
シュッとした猫が、ずん胴になった
常滑市観光協会は、常滑の招き猫の生まれをこう紹介しています。「常滑では戦前から招き猫が作られていましたが、当時は本物の猫に近いシュッとした体形のものを制作していたそうです」。
変わったのは、昭和20年代。「梅月冨本人形園の三代目が友人の原型師とともに、大胆なアイデアを形にしたのです!丸い頭、大きな瞳、そしてずん胴の愛らしい姿」。この顔が、瞬く間に全国に広がりました。
二つの顔が、愛知にある
愛知県の公式観光サイトは、二つの産地の猫をこう分けています。「スリムで上品な『瀬戸系(磁器)』」と「ずんぐりとした『常滑系(陶器)』」。
どちらが本物、ではありません。明治の瀬戸のすらりとした猫背と、昭和の常滑の丸い顔。どちらの顔に呼ばれるかで、選ぶ招き猫が変わります。
2. 常滑・梅月:二頭身で、小判をがっちり抱える
一体一体、職人の手で
丸顔を生んだ梅月冨本人形園は、いまも常滑市で招き猫をつくっています。公式サイトには「一体一体すべて職人による手作りです」とあります。
大きな耳、まるい顔、大きな垂れ目、二頭身。愛知県の観光サイトの言葉を借りれば、「がっちりつかんだ大きな小判が商売繁盛を表現」しています。常滑系の招き猫は全国の約8割のシェアを占めていると言われ、梅月自身も全国シェア約80%を生産しているとしています。
常滑焼 招き猫 梅月 白小判猫(右手)6号|愛知・常滑
丸顔の常滑系を生んだ窯元の、白い小判猫です。高さ19cm。右手を挙げて、お金を招きます。
白は「来福招福」。お店のレジ横や、開店祝いの贈り物に。一体ずつ職人の手で仕上げられています。
常滑焼 招き猫 梅月 白小判猫(右手)6号 高さ19cm
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常滑焼 招き猫 梅月 白小判猫(左手)5号|愛知・常滑
同じ白小判猫の、左手を挙げた一体です。高さ16cm。左手は、お客を招きます。
右手の白小判猫と並べて、一対で飾ることもできます。お金も人も、両方を招く飾り方です。
常滑焼 招き猫 梅月 白小判猫(左手)5号 高さ16cm
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豆知識:常滑には、高さ3.8mの招き猫がいる
常滑駅から観光案内所へ向かう道沿いの壁の上から、巨大な招き猫が顔をのぞかせています。愛称は見守り猫「とこにゃん」。高さ3.8m、幅6.3m(常滑市観光協会)。
その下の壁には、常滑ゆかりの作り手による39体の「御利益陶製招き猫」と、本物そっくりの猫11体が並ぶ「とこなめ招き猫通り」があります。
3. 瀬戸・中外陶園:すらりとした猫背の、古瀬戸型
ヨーロッパの石膏型から生まれた猫
1952年に瀬戸で創業した中外陶園は、瀬戸の招き猫の始まりをこう書いています。「ヨーロッパから導入された石膏型の技法を応用して、明治30年代後半にまるで本物の猫のようにすらりとした猫背が特徴の「古瀬戸(ふるせと)型招き猫」は誕生しました」。
その技法と姿を受け継いだのが「瀬戸まねき猫」。「素地作りから絵付けまで一つひとつ丁寧に」つくられています。商品のデザインも、外に出さず自社の中で一貫して行っているそうです。
中外陶園 瀬戸まねき猫 右 3号(BEAMS JAPAN 別注)|愛知・瀬戸
明治の古瀬戸型を受け継ぐ、すらりとした招き猫です。高さ9.3cm。手のひらに乗る大きさです。
BEAMS JAPANが中外陶園に別注した色。瀬戸の招き猫の古い形を、いまの部屋に飾りやすい色で。
中外陶園 瀬戸まねき猫 右 3号(BEAMS JAPAN 別注)
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瀬戸の招き猫を、いまの暮らしの形に
中外陶園には、もう一つSETOMANEKIというブランドがあります。「瀬戸の地で、明治時代後半から長きに渡り創り続けられてきた瀬戸焼の招き猫を現代の多様な暮らしに寄り添い…SETOMANEKIとして進化させました」。
装飾を削ぎ落とした、つるりとした磁器の招き猫です。職人が一つずつ彩色しているので、色の入り方に少しずつ個体差があります。北欧風の部屋にも置ける招き猫です。
SETOMANEKI 小サイズ 金手(中外陶園)|愛知・瀬戸
挙げた手だけが金色の、白い磁器の招き猫です。高さ約10cm、専用箱入り。
和室でなくても、すっとなじむ形。新築祝いや、デスクに置く小さな縁起物に。
SETOMANEKI 小サイズ 金手 高さ約10cm(中外陶園)
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4. 右手はお金、左手はお客。色にも願いがある
挙げている手で、招くものが変わる
愛知県の観光サイトによると、「右手を挙げた猫は「銭を招く」、左手を挙げた猫は「お客を招く」の意味があるとされています。
お客に来てほしいお店なら左手、という選び方ができます。迷ったら、右と左を一対で並べる方法もあります。
色ごとの願い
常滑市観光協会は、招き猫の色にこめられた願いをこう紹介しています。桜は恋愛招福、青は安全招福、黄は良縁招福、緑は合格招福、金は金運招福、白は来福招福、黒は厄除招福、赤は健康招福。
贈る相手のいまに合わせて色を選ぶと、招き猫が一言のメッセージになります。受験生に緑、新しい車に青、というように。
5. 陶器か磁器か。置く場所と大きさで選ぶ
① 常滑の陶器、瀬戸の磁器
愛知県の観光サイトは、常滑系を陶器、瀬戸系を磁器としています。瀬戸系は「柔らかなラインや前掛けのフリルなど、細かい表現が得意」。常滑系は、ふっくらとした二頭身。手に取ったときの質感も、顔と同じくらい違います。
② 「号」と高さを、置き場所に合わせる
招き猫の大きさは「号」で表されます。梅月の白小判猫なら、5号で高さ16cm、6号で19cm。瀬戸まねき猫の3号は9.3cm、SETOMANEKIの小サイズは約10cmです。
店のレジ横やデスクなら10cm前後、玄関の靴箱の上やお店の入口なら、もう一回り大きなものを。置き場所の高さを測ってから選ぶと、ちょうどいい一体に出会えます。
6. 常滑と瀬戸、招き猫に会える町
常滑:招き猫通りと、とこにゃん
名鉄の常滑駅から歩いてすぐ、壁の上のとこにゃんが出迎えます。愛知県の観光サイトによると、名鉄常滑駅のホームや電車の中からも見えるそうです。
壁沿いの39体の御利益陶製招き猫には、それぞれ作者の名前とご利益が添えられています。好きな一体を探しながら歩くと、やきもの散歩道へつながります。
瀬戸:招き猫ミュージアム
瀬戸には、中外陶園が運営する招き猫ミュージアムがあります。愛知県の観光サイトは「数千点を展示する日本最大の招き猫専門ミュージアム」と紹介しています。
古い招き猫や珍しい招き猫が並ぶので、自分がどの顔に惹かれるかを確かめに行くのにぴったりです。開館日は、出かける前に確かめてください。
7. よくある質問(FAQ)
常滑系と瀬戸系の招き猫は、どう違いますか?
常滑系は丸い顔と大きな目の二頭身、瀬戸系はすらりとした細身です。
愛知県の観光サイトは、常滑系を陶器、瀬戸系を磁器としています。常滑系の丸い顔は昭和20年代に、瀬戸の古瀬戸型は明治30年代後半に生まれました。
右手と左手、どちらを選べばいいですか?
右手は「銭を招く」、左手は「お客を招く」とされています。
お客に来てほしいお店なら左手、という選び方ができます。右と左を一対で並べる方法もあります。
招き猫の色には意味がありますか?
色ごとに願いがこめられています。
常滑市観光協会によると、桜は恋愛、青は安全、黄は良縁、緑は合格、金は金運、白は来福、黒は厄除、赤は健康の招福とされています。
開店祝いに贈るなら、どれがいいですか?
お客を招く左手を選ぶと、贈る気持ちが伝わりやすくなります。
店先やレジ横に置く大きさなら、梅月の5号(高さ16cm)前後が目安になります。お店の雰囲気がモダンなら、瀬戸のSETOMANEKIもなじみます。
招き猫は、どこで生まれたのですか?
愛知県の観光サイトは、江戸時代の浅草の話を紹介しています。
老婆の夢に出てきた猫のお告げで土焼きの置物を作ったところ、良いことが続いた。その話から招き猫のブームが生まれた、とされています。起こりには諸説あります。
招き猫の大きさの「号」とは何ですか?
招き猫の大きさを表す目安です。
作り手や型によって高さは違います。梅月の白小判猫では5号が16cm、6号が19cm。買うときは、号と一緒に書かれている高さを確かめてください。
8. まとめ:丸顔の常滑か、細身の瀬戸か
招き猫の丸い顔は、昭和20年代の常滑で生まれました。梅月冨本人形園の三代目が、友人の原型師と形にした顔です。
常滑・梅月の白小判猫は、大きな目と二頭身で、小判をがっちり抱える陶器の猫。一体ずつ職人の手で仕上げられています。
瀬戸・中外陶園の瀬戸まねき猫は、明治30年代後半の古瀬戸型を受け継ぐ、すらりとした磁器の猫。SETOMANEKIは、その瀬戸の招き猫をいまの暮らしの形にしました。
右手はお金、左手はお客。色には、それぞれの願い。あなたが呼ばれるのは、丸顔の常滑ですか、細身の瀬戸ですか。ぜひ、日本の産地の招き猫を迎えてみてください。