栗きんとん、と聞いて思い浮かぶのは、おせちの黄金色のあれだと思います。
けれど岐阜県の中津川で栗きんとんといえば、まったく別の菓子を指します。
茹でた栗を布巾で絞った、一口の和菓子。さつまいもも、くちなしも入りません。原材料の欄が「栗、砂糖」の2行で終わっている品もあります。
同じ名前で、別のものが二つある。だから「栗きんとん」で検索すると、正月の煮物と秋の和菓子が混ざって出てきます。
この記事では、その二つの違いと、中津川に70店以上あるという作り手のこと、そして買えるのが9月から冬までだという季節の話を順に書きます。
1. 「栗きんとん」は、二つあります
おせちのほうは、さつまいもが主役です
正月に食べるあの黄金色は、さつまいもの餡に栗の甘露煮を加えたものです。とろりとした煮物で、色はくちなしで染めています。
栗はそのなかに、いくつか入っている。主役はさつまいものほうです。
中津川の栗きんとんは、そうではありません。さつまいもも、くちなしも入らない。栗を練って、布巾で絞った一口の和菓子です。栗が主役の菓子だと考えてください。
見た目で、すぐ分かります
中津川のものは、栗そのままの色です。茶色から黄色のあいだ。染めていないので、栗の出来によって少しずつ違います。
形は、絞ったときの布巾のひだが残った、丸い一口大。茶巾しぼりの形です。ひとつずつ紙に包まれて箱に並んでいます。
どちらが本物という話ではありません。別の菓子が、たまたま同じ名前で呼ばれているだけです。探しているほうを、先に決めてください。
ちこり村 栗きんとん|まずは、この形を知る
岐阜県中津川のちこり村。一括表示の原材料名は「栗餡(栗(国産)、砂糖)」。本当に、栗と砂糖だけです。
1個23g。4個・6個・10個から選べます。賞味期限は冷蔵便で出荷日から14日、冷凍便なら30日。要冷蔵(10℃以下)です。
この記事でいちばん手が届く価格です。まず食べてみて、それから量の多いものへ、という順で構いません。
ちこり村 栗きんとん(岐阜・中津川/無添加・無着色)
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2. 原材料の欄を、見てください
農林水産省が、作り方を載せています
栗きんとんは、農林水産省の「うちの郷土料理」に、岐阜県の郷土料理として載っています。そこに材料が書かれています。
30個分で、生栗1kg、砂糖300g、塩少々。それだけです。
作り方も短い。栗を茹でて中身を取り出し、砂糖と塩を加えて温めたあと、弱火で練り、湿らせた布巾で包んで形を整える。工程はこれで終わりです。
店によって、入っているものが違います
ただし、これは家庭で作るときの基本形です。店の商品を見ると、ここに水飴や増粘剤が加わっているものもあります。日持ちや口あたりを整えるためで、どちらが悪いという話ではありません。
ただ、材料が少ないほど、栗の出来と練り具合がそのまま出ます。隠せるものがないからです。栗の産地、蒸すか茹でるか、砂糖の量、練りの強さ。それだけで味が決まる。
だから、買う前に原材料の欄を見てください。「栗、砂糖」の2行で終わっている品があります。そこに何が並んでいるかで、どういう菓子なのかが分かります。
同じ欄で、栗の産地も分かります
原材料名は、多いものから順に書く決まりです。だから栗きんとんなら、たいてい先頭に栗が来ます。
そこに「栗(国産)」と書いてあれば、産地までその一行で確かめられます。括弧のない「栗」だけなら、どこの栗かは書かれていない、ということです。
この記事で紹介するのは、原材料名に「栗(国産)」と書かれているものだけです。栗そのものの味で決まる菓子なので、そこは見ておきたいところだと思います。
豆知識:9月9日は「栗節句」でした
農林水産省の解説に、こう書かれています。「9月9日は重陽の節句、栗節句と言われ、昔から長寿を祈り、栗料理や栗菓子を食べていた」。
五節句のひとつで、菊の節句としても知られる日です。旧暦の9月9日は、いまの10月ごろ。ちょうど栗が出そろう時期にあたります。
栗きんとんが9月に店先へ並びはじめるのは、この時季と重なっています。季節の菓子というより、季節そのものを食べる菓子に近いのかもしれません。
くり屋南陽軒 栗きんとん 10個入|原材料は、2行だけ
製造者は有限会社南陽軒、岐阜県中津川市付知町。商品ページの原材料欄には、「栗(国産)、砂糖」としか書かれていません。2行で終わっています。
店の言葉で「国産栗100%+砂糖だけ!完全手造りの本物の栗きんとん!」。
賞味期限は要冷蔵で14日、開封後は3日以内。エージレスパックで届きます。
この章の話を、そのまま確かめられる一品です。10個入なので、家族で分けるにも、贈るにもちょうどいい量。
くり屋南陽軒 栗きんとん 10個入(中津川市付知町)
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3. ひとつの町に、70店以上あります
中津川は、中山道の宿場町でした
岐阜県中津川市は、江戸時代に中山道の宿場町として栄えた町です。人が行き交い、茶の湯の文化も入ってきました。
そこに、特産の栗があった。茶席に出す菓子として、栗を使ったものが作られるようになった、と伝えられています。
ただし、はじめから菓子だったわけではありません。全国菓子工業組合連合会の解説によれば、江戸時代は「蒸した栗を切って中身を取り出し、すり鉢でつぶし、塩、あるいは砂糖を入れ出来上がったものを餅や、ご飯にまぶしたり」していたそうです。
豆知識:もとは、ご飯にまぶすものでした
いまの一口菓子の形は、そんなに古いものではありません。
全国菓子工業組合連合会によれば、菓子として商品化されたのは明治の中ごろ。そして大正時代に栗の栽培が始まると「大粒の栽培栗をたくさん使えるようになると、栗きんとんの生産量はどんどん上がっていきました」。
山で拾う栗から、畑で育てる栗へ。そこで作れる数が変わり、町の菓子として広がった。茶巾で絞ったあの形は、栽培栗があってこそ成り立っています。
組合に23軒、町全体では70店を超えます
全国菓子工業組合連合会の解説に、はっきりした数字があります。中津川菓子組合は23軒。ただし複数の店を構えるところが多く、「中津川市内で約四十店あり、非組合員も合わせますと七十店を超え」。
ひとつの菓子に、ひとつの町で70店以上。これはかなり珍しいことだと思います。
だから、どこが一番かという話にはなりません。材料も作り方もほぼ同じで、そのうえで店ごとに味が違う。食べ比べる楽しみが成立するのは、この数があるからです。
くり屋南陽軒 栗きんとん・栗柿 詰め合わせ|食べ比べから始める
栗きんとんが5個と、栗柿が5個。同じ作り手で、二つの形を並べられます。
栗柿は、市田柿に栗きんとんを詰めたものです。原材料は市田柿、栗(国産)、砂糖。干し柿の甘さと、栗の甘さが重なります。
いきなり店を選べないときは、こういう詰め合わせから入るのが早い。賞味期限は要冷蔵で14日です。
くり屋南陽軒 栗きんとん・栗柿 詰め合わせ(各5個)
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4. 買えるのは、9月から冬まで
栗が採れる時期にしか、作れません
栗が主役の菓子なので、栗がなければ作れません。だから栗きんとんは、はっきりした季節商品です。
農林水産省の解説にも、こうあります。「毎年9月から冬にかけて栗のおいしい季節になると、現在でも、栗きんとんをはじめとした栗菓子を求めて、県内外から多くの人が中津川に足を運ぶ」。
通販でも同じです。「9月から2月まで」と期間を明記している店があります。春や夏に探しても、見つからないことがあります。
冷蔵か、冷凍か
栗きんとんは日持ちしません。要冷蔵のもので、賞味期限は14日ほど。開封したら数日で食べきる前提です。
冷凍で届くものもあります。そちらは製造日から1か月ほどもち、解凍してから数日。まとめて買って、少しずつ出したいときはこちらです。
贈るなら、相手が受け取れる日を先に確かめてください。不在で置かれてしまうと、日持ちの短さがそのまま困りごとになります。
恵那福堂 栗きんとん 10個入|冷凍で、9月から2月まで
中津川の恵那福堂。昭和5年、1930年の創業です。厳選した国産栗を使い、無添加でひとつひとつ職人の手で仕上げています。
冷凍で届きます。賞味期限は冷凍で製造日から1か月、解凍後は4日。商品ページにも「9月から2月まで 期間限定」と書かれています。
まとめて手元に置いておきたいときに。原材料は、ここも「栗(国産)、砂糖」です。
恵那福堂 栗きんとん 10個入(冷凍・9月から2月まで)
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5. 栗きんとんから、広がった菓子
中身は同じで、包み方が変わります
中津川と、隣の恵那には、栗きんとんを応用した菓子がいくつもあります。もとが「栗と砂糖を練ったもの」なので、包み方や合わせ方で形が変わる。
干し柿に詰めたもの、餅にまぶしたもの、羊羹に流したもの、洋菓子に仕立てたもの。店ごとに工夫があります。
どれも秋から冬の菓子です。栗きんとんそのものを食べたあとで、こちらに移っていくと楽しい。
良平堂 栗福柿|栗きんとんを、市田柿で包む
製造者は有限会社良平堂、岐阜県恵那市大井町。原材料名は「干し柿(国内製造)、栗、氷砂糖、砂糖/トレハロース」です。
市田柿のなかに、栗のあんが入っています。干し柿の濃い甘さと、栗の穏やかな甘さが重なる。栗きんとんそのものとは、別の菓子として楽しめます。
消費期限は、発送日を含めて7日。ページにも「賞味期限が短い商品です。確実にお受け取りいただける日時をご指定ください」とあります。日程を決めてから注文してください。
良平堂 栗福柿 6入(岐阜・恵那/栗きんとんを市田柿で包む)
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6. よくある質問(FAQ)
おせちの栗きんとんと、何が違うのですか?
材料がまったく違います。おせちのものはさつまいもの餡に栗の甘露煮を加えたもので、くちなしで黄金色に染めてあります。
中津川の栗きんとんは、栗が主役です。茹でた栗を練って、布巾で絞った一口の和菓子。原材料が「栗、砂糖」の2行で終わっている品もあります。染めていないので、栗そのままの茶色から黄色をしています。同じ名前ですが、別の菓子だと思ってください。
いつ買えますか?
9月から冬にかけてです。材料が栗しかないので、栗の採れる時期にしか作れません。
農林水産省の解説にも「毎年9月から冬にかけて栗のおいしい季節になると、現在でも、栗きんとんをはじめとした栗菓子を求めて、県内外から多くの人が中津川に足を運ぶ」とあります。通販には「9月から2月まで」と期間を明記している店もあります。
どのくらい日持ちしますか?
短いです。要冷蔵のもので賞味期限は14日ほど、開封後は3日以内。冷凍で届くものは、製造日から1か月ほど、解凍後は4日くらいが目安です。
贈るなら、相手が受け取れる日を先に確かめてください。不在で置かれてしまうと困ります。
店がたくさんありますが、どこを選べばいいですか?
中津川市内には70店を超える作り手があります。材料も作り方もほぼ同じで、そのうえで店ごとに味が違います。順位をつけられるものではありません。
迷ったら、原材料の欄を見てください。「栗、砂糖」の2行で終わっている品があります。あるいは、栗きんとんと栗柿が一緒に入った詰め合わせから始めるのも早いです。
冷凍のものと、冷蔵のもの、どちらがいいですか?
食べる予定で決めてください。すぐに食べる、あるいは数日で食べきるなら冷蔵。まとめて買って少しずつ出したいなら冷凍です。
冷凍のものは解凍してから4日ほどが目安になります。凍ったまま置いておける期間が長い、という違いだと考えてください。
栗きんとん以外に、どんな栗菓子がありますか?
中津川と隣の恵那には、栗きんとんを応用した菓子がいくつもあります。干し柿に詰めた栗柿や栗福柿、餅にまぶした栗粉餅、羊羹に流したもの、洋菓子に仕立てたもの。
もとが「栗と砂糖を練ったもの」なので、包み方や合わせ方で形が変わります。どれも秋から冬の菓子です。
7. まとめ:同じ材料で、ここまで違う
「栗きんとん」は、二つあります。おせちのものはさつまいもの餡に栗の甘露煮を加え、くちなしで染めた黄金色。中津川のものは、栗を練って布巾で絞った一口の和菓子です。探しているほうを、先に決めてください。
材料は、農林水産省の解説によれば30個分で生栗1kg、砂糖300g、塩少々。ただし店の商品には、水飴や増粘剤が加わっているものもあります。材料が少ないほど、栗の出来と練り具合がそのまま出る。だから買う前に原材料の欄を見てください。「栗、砂糖」の2行で終わっている品があります。
作り手は、中津川市内に70店以上。ひとつの菓子に、ひとつの町でこれだけ。だから順位はつきません。材料も作り方もほぼ同じで、そのうえで店ごとに味が違う。食べ比べが成立するのは、この数があるからです。
買えるのは9月から冬まで。栗が採れる時期にしか作れないからです。日持ちは短く、冷蔵で14日、冷凍でも解凍後は4日ほど。贈るなら、相手が受け取れる日を先に確かめてください。
栗きんとんそのものを食べたあとは、干し柿に詰めたものや、餅にまぶしたものへ。もとが栗と砂糖を練っただけなので、包み方でいくらでも形が変わります。今年の秋に、ひとつ取り寄せてみてください。