「日本の腕時計メーカーって、結局どこがどんな時計をつくっているの?」
大きく分けると、セイコー、シチズン、カシオ、オリエントスター(エプソン)といった大きなメーカー、Knotのような新しいブランド、そして世界に認められた独立時計師の3つで見ると、全体がつかみやすくなります。
ただし、同じブランドでもモデルによって日本でつくるものと海外でつくるものがあります。この記事では、どのメーカーが、どこで、どのラインを日本でつくっているかを価格帯順の一覧にまとめ、原産国が日本と確かめられたモデルを紹介します。
【一覧】日本の腕時計メーカー・ブランド(価格帯の高い順)
| ブランド(メーカー) | 日本でつくる場所・もの | 価格帯の目安 |
|---|---|---|
| 独立時計師 (浅岡肇・菊野昌宏 ほか) |
ひとりの時計師が設計から仕上げまで手がける | 数百万円〜 |
| Grand Seiko (セイコー) |
岩手・雫石(機械式)/長野・信州(スプリングドライブ) | 数十万円〜 |
| The CITIZEN (シチズン) |
年差±5秒のエコ・ドライブ、和紙文字板 | 30万円台〜 |
| SEIKO PROSPEX (セイコー) |
1965年の国産初ダイバーズを受け継ぐモデル | 10万円台後半〜 |
| G-SHOCK MT-G (カシオ) |
カシオ山形工場の微細加工技術 | 10万円台〜 |
| ORIENT STAR (セイコーエプソン) |
エプソンが企画から製造まで。機械式が中心 | 6万円台〜 |
| Maker's Watch Knot | 福島のケース、秋田の文字盤、ミヨタのムーブメント | 6万円台〜(機械式) |
※ 価格帯は、この記事で紹介するモデルと各ブランドの主なラインの目安です。同じブランドでも、モデルによって原産国が違うことがあります。
1. 日本の腕時計は、「精度」と「壊れない」で世界を変えた
1969年、世界初のクオーツ腕時計
1969年12月25日、セイコーは世界で初めてのクオーツ腕時計「クオーツ アストロン 35SQ」を発売しました。精度は月差±5秒。当時の機械式時計が日差で数十秒ずれていたのと比べると、桁違いの正確さです。この時計は、のちに日本機械学会の「機械遺産」、国立科学博物館の「未来技術遺産」に選ばれています。
そして1983年。カシオの技術者が出したわずか14文字の企画書から、落下強度10m・10気圧防水・電池寿命10年の「トリプル10」を掲げたG-SHOCKが生まれます。正確で、壊れない。日本の腕時計は、時計に求められることを一つずつ塗り替えてきました。
2. 日本の腕時計メーカー・ブランド一覧|どこで、何をつくっているか
日本の腕時計を選ぶときは、ブランド名だけでなく「どのラインを、どこでつくっているか」まで見ると、選びやすくなります。
セイコー(グランドセイコー/プロスペックス)
最高峰のグランドセイコーは、岩手県雫石町の「グランドセイコースタジオ 雫石」で機械式の9Sムーブメントを、長野県の「信州 時の匠工房」でスプリングドライブなどをつくっています。ケースを歪みのない鏡面に仕上げる研磨は「ザラツ研磨」と呼ばれ、グランドセイコーの顔になっています。ダイバーズのプロスペックスは、1965年に生まれた国産初のダイバーズウオッチの流れを受け継ぐラインです。
シチズン(ザ・シチズン)
光で発電するエコ・ドライブのシチズン。最上位のザ・シチズンには年差±5秒のモデルがあり、和紙を使った文字板が、光を通して柔らかく浮かび上がります。
カシオ(G-SHOCK MT-G/MR-G/オシアナス)
G-SHOCKのメタルラインMT-Gなどの上位モデルには、カシオ山形工場の微細加工技術による彫刻やサファイアガラスが使われています。樹脂のG-SHOCKとは違う、金属の重みのあるG-SHOCKです。
オリエントスター(セイコーエプソン)
2017年にセイコーエプソンへ統合され、いまはエプソンが企画から製造までを手がけています。秋田県の秋田エプソンは、オリエントブランドの時計とムーブメントの加工・組み立てを担う国内の拠点のひとつです。機械式の自動巻きを、手の届く価格でつくり続けています。
新しいブランド(Knot/KUOE ほか)
東京・吉祥寺のKnotは、日本の部品メーカーと組んで時計をつくるブランド。京都のKUOEは、アンティークのような小ぶりな時計のブランドで、日本製のラインも持っています。
独立時計師(浅岡肇・菊野昌宏 ほか)
ひとりで設計から部品づくり、仕上げまでを手がける時計師もいます。菊野昌宏さんは2013年、日本人として初めて独立時計師アカデミー(AHCI)の正会員に。浅岡肇さんは2009年に日本初のトゥールビヨン搭載の腕時計を発表し、2015年にAHCI正会員となり、2022年には「現代の名工」に選ばれました。ひとりでつくるため作品の数は限られ、価格は数百万円からです。
3. 選び方|駆動方式・価格帯・原産国の見方
時間を「育てる」機械式か、「任せる」クオーツか
【機械式(自動巻き・手巻き)】
ゼンマイがほどける力で動きます。外したまま置くと止まり、数年に一度は分解掃除(オーバーホール)が要ります。そのぶん、直しながら長く使えるのが機械式の魅力です。
【クオーツ(電池・ソーラー)】
水晶の振動で時を刻み、とても正確です。光発電のエコ・ドライブや電波ソーラーなら、電池交換や時刻合わせの手間もほとんどかかりません。
原産国は、商品ページの「原産国」欄で
同じブランドでも、モデルごとに原産国が違うことがあるので、日本製を選びたいときは、型番ごとに商品ページや保証書の原産国の欄を確かめてください。この記事で紹介する時計は、どれも原産国が日本のモデルです。
豆知識:秒針が「滑る」スプリングドライブ
グランドセイコーの一部のモデルに載るスプリングドライブは、セイコーが開発した駆動方式です。ゼンマイの力で動きながら、その速さを水晶振動子の信号で制御します。秒針がチクタクと刻むのではなく、音もなくすーっと滑るように動くのが特徴です。長野の「信州 時の匠工房」でつくられています。
4. 一生使うための、日本製の高級時計
昇進や結婚、還暦の記念に。直しながら長く使える、日本製の時計です。
Grand Seiko(グランドセイコー)|正規店で選ぶ
岩手と長野の工房で、一本ずつ。
機械式は岩手県雫石町の「グランドセイコースタジオ 雫石」、スプリングドライブは長野県の「信州 時の匠工房」でつくられています。信州の雪景色を思わせる白い文字盤の「雪白」(SBGA211)のように、日本の自然を文字盤に写したモデルが多いのも魅力です。
グランドセイコーは、公式ブティックや正規販売店で実物を腕に乗せて選ぶのがいちばんです。正規店なら保証やアフターサービスも受けられます。
The CITIZEN(ザ・シチズン)|藍染和紙文字板 エコ・ドライブ AQ4091-56M
1年で5秒しかずれない時計に、藍で染めた和紙。
光発電のエコ・ドライブで、精度は年差±5秒。文字板には藍染めの和紙を使っていて、見る角度や光によって、紙の繊維の表情が浮かび上がります。
ケースとバンドは軽いスーパーチタニウム、10気圧防水。光で動き続けるので、引き出しにしまっておいても止まりにくい。正確さを毎日の道具として使いたい人に。
ザ・シチズン 藍染和紙文字板 エコ・ドライブ AQ4091-56M(年差±5秒)
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ORIENT STAR(オリエントスター)|コンテンポラリー スタンダード「樹木の葉」RK-AU0107E
はじめての機械式を、日本製で。
セイコーエプソンが企画から製造までを手がけるオリエントスターの、機械式・自動巻きモデル。アースカラーの文字盤に、樹木の葉をイメージした表情を重ねています。
6万円台で手に入る、原産国が日本の機械式です。腕の動きでゼンマイが巻かれ、毎日着けていれば止まりません。「機械式時計とはどんなものか」を、最初に知る一本に。
オリエントスター コンテンポラリー スタンダード 樹木の葉 RK-AU0107E(機械式・自動巻き)
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5. 日本の部品で組む、新しいブランド
大きなメーカーとは別に、日本の部品メーカーと組んで時計をつくる新しいブランドも生まれています。
Maker's Watch Knot(ノット)|AT-38 オートマチック
福島のケース、秋田の文字盤、日本のムーブメント。
東京・吉祥寺のKnotの機械式モデルAT-38は、ケースを福島県須賀川市の林精器製造が、文字盤を秋田のセレクトラがつくり、ムーブメントにはミヨタ製を使っています。主要な部品がすべて日本でつくられた、日本製の機械式時計です。
ストラップは別売りで、工具なしで付け替えられるので、栃木レザーや組紐など、服に合わせて着せ替えを楽しめます。日本の部品メーカーの技術を、6万円台の機械式で腕に乗せられる一本です。
Maker's Watch Knot AT-38 オートマチック シルバー&ネイビー(時計本体のみ)
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6. 休日に着けたい、タフな日本製時計
アウトドアや海、休日のカジュアルな服に合う、丈夫さを持った日本製の時計です。
CASIO G-SHOCK|MT-G カーボン 軽量化モデル MTG-B2000YBD-1AJF
山形の工場で仕上げる、金属のG-SHOCK。
樹脂のイメージが強いG-SHOCKの中で、金属を組み合わせたのがMT-G。このモデルは、カーボンのケースを金属で包む構造で、軽さと丈夫さを両立させています。サファイアガラスや繊細な彫刻には、カシオ山形工場の微細加工技術が使われています。
電波ソーラーとBluetoothで、時刻合わせの手間もほとんどありません。原産国は日本。週末も平日も着けていられる、大人のG-SHOCKです。
G-SHOCK MT-G カーボン 軽量化モデル MTG-B2000YBD-1AJF(電波ソーラー・Bluetooth)
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SEIKO PROSPEX(プロスペックス)|1965 ヘリテージ メカニカルダイバーズ SBDC197
国産初のダイバーズを、いまの技術で。
1965年に生まれたセイコー初の、そして国産初のダイバーズウオッチの系譜を受け継ぐ「1965 ヘリテージ」のモデルです。
ムーブメントは自動巻きの6R55で、最大約72時間動き続けます。300m潜水用防水、ケース径40mm。金曜に外して月曜に着けても止まりにくい持続時間と、海に連れていける丈夫さを持った機械式です。原産国は日本。
セイコー プロスペックス 1965 ヘリテージ メカニカルダイバーズ SBDC197
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7. よくある質問(FAQ)
日本製の腕時計かどうかは、どう見分けますか?
型番ごとに、商品ページや保証書の「原産国」の欄を見てください。
同じブランドでも、モデルによって原産国が違うことがあります。ブランド名だけで判断せず、買う前に型番で確かめるのが確実です。
日本で有名な時計職人はいますか?
独立時計師アカデミー(AHCI)の正会員になった日本人がいます。
菊野昌宏さんは2013年に日本人として初めてAHCIの正会員に、浅岡肇さんは2015年に正会員となり、2022年には「現代の名工」に選ばれました。どちらも作品の数が限られた、数百万円からの時計です。
機械式時計のオーバーホールは、どれくらいの頻度で必要ですか?
メーカーの案内に従ってください。目安は数年に一度です。
中の油が劣化すると、部品がすり減ったり精度が落ちたりします。動いているうちに定期的に分解掃除に出すことで、長く使い続けられます。費用や期間はブランドとモデルで違うので、購入時に確かめておくと安心です。
機械式時計は、毎日着けないと止まりますか?
外したまま置いておくと止まります。それが機械式の仕組みです。
自動巻きは腕の動きでゼンマイが巻かれ、外すとモデルごとの持続時間(この記事のプロスペックスなら最大約72時間)で止まります。止まったらリューズを回してゼンマイを巻き、時刻を合わせれば、また動き始めます。
時計を磁気から守るには、どうすればいいですか?
スマートフォンやタブレット、スピーカーなどから離して置いてください。
時計の部品が磁気を帯びると、精度が狂う原因になります。寝るときにスマートフォンの横に時計を置く、バッグの磁石の留め具に近づける、といったことを避けるだけでも違います。
正規店とネットの並行輸入品、どちらで買うのがいいですか?
長く使う時計なら、正規店がおすすめです。
正規店で買うと、メーカーの保証やアフターサービスを受けやすくなります。とくにグランドセイコーのような高級時計は、実物を腕に乗せて、重さや文字盤の表情を確かめてから選ぶと、長く付き合える一本に出会えます。
8. まとめ:どこでつくられた時計かを知って、選ぶ
岩手と長野の工房でつくるグランドセイコー、和紙の文字板を持つザ・シチズン、山形の技術で仕上げるMT-G、エプソンのオリエントスター、福島と秋田の部品で組むKnot、そしてひとりで時計をつくる独立時計師。日本の腕時計は、どこで、誰がつくったかまで分かる時計です。
ブランド名だけでなく、型番ごとの原産国を確かめて。ぜひ、日本でつくられた一本を探してみてください。