「急須なんてどれも同じ」と思っていませんか? 日本の急須、特に愛知県の「常滑焼」は、お茶の味を化学的に美味しくします。
・酸化鉄とタンニンの反応:
常滑の朱泥(しゅでい)という土には、酸化鉄が多く含まれています。これがお茶の苦味成分(タンニン)と反応し、角の取れた驚くほど「まろやか」な味わいに変化させます。
・金気(かなけ)が出ない「陶製茶こし」:
ステンレスの茶こしは便利ですが、微細な金属臭がお茶に移ることがあります。伝統的な急須は、本体と同じ土で細かい穴を開けた「陶製茶こし(ささめ・セラメッシュ)」を備えており、茶葉が急須の中でゆったりと開くため、お茶本来の香りと旨みを100%引き出します。
一滴が、心を整える。世界が憧れる日本の「ブリューイング」技術。
お湯を沸かし、茶葉や豆を蒸らし、香りが立つ瞬間を待つ。
日本の茶器は、ただ喉を潤すためだけの道具ではありません。「常滑焼」の急須は渋みを旨みに変え、「有田焼」のドリッパーはコーヒーのクリアな酸味を引き出します。
世界中のトップバリスタや日本茶インストラクターが愛用する、機能美を極めた日本製の道具たち。忙しい日常に「静寂(Zen)」の時間をもたらす、至高のドリングウェアをご紹介します。
茶器・コーヒー用品の選び方と基礎知識
【抹茶】 世界を魅了する「MATCHA」と茶筅の技
世界中でブームの抹茶。自宅でクリーミーな泡(フォーム)を作るには、日本製の「茶筅(ちゃせん)」が不可欠です。
・奈良・高山茶筌(たかやまちゃせん):
国内シェアのほぼ全てを占める奈良県の伝統工芸。一本の竹をナイフだけで80本〜100本以上に細かく裂き、穂先をミクロン単位で削り上げます。この弾力としなりが、空気を含んだきめ細かいシルキーな泡を作り出します。金属製の泡立て器では絶対に作れない、口当たりです。
【珈琲】 バリスタが選ぶ「燕三条」と「有田」
「サードウェーブコーヒー」の震源地となったアメリカのカフェでも、日本製の器具が標準装備されています。
・燕三条のドリップポット:
美味しいコーヒーの条件は「湯量のコントロール」です。燕三条の職人が磨き上げた「極細口」のポットは、お湯を真下に、一滴単位で落とすことができます。まるで自分の指先からお湯が出ているかのような感覚で、狙った味を抽出できます。
・有田焼のドリッパー:
400年の歴史を持つ有田焼(磁器)は、薄くて丈夫。計算され尽くした内側の「リブ(溝)」の角度と高さが、お湯の抜けるスピードを最適化し、雑味のないクリアなコーヒーを淹れることができます。プラスチックにはない保温性の高さも魅力です。
唇が触れる場所。「飲み口」で選ぶカップ
飲み物の味は、唇が触れるカップの「厚み」と「素材」で変わります。
・磁器(薄手):
有田焼や美濃焼の薄いカップは、飲み物の流れをスムーズにし、コーヒーの酸味や紅茶の繊細な香りをシャープに感じさせます。
・陶器(厚手):
益子焼や萩焼のような土のカップは、ぽってりとした厚みが唇に優しく、カフェオレや日本茶の温かさを引き立て、ホッとする安心感を与えます。
道具を育てる「養壺(ヤンフー)」とQ&A
Q. 急須の茶渋は漂白していい?
A. 基本的にはNGです。陶器(特に土もの)は匂いや成分を吸着するため、漂白剤の匂いが残ってしまいます。茶渋はお茶の成分が染み込んだ「勲章」でもあります。どうしても気になる場合は、重曹とお湯でつけ置き洗いをしてください。
Q. 「急須を育てる」とは?
A. お茶好きの間では「養壺(ヤンフー)」と呼ばれます。洗剤を使わずに水洗いだけで使い続けると、急須の土にお茶の油分が馴染み、内側が黒光りしてきます。育った急須で淹れるお茶は、香りの立ち方が格別です。道具と共に歳を重ねる、日本ならではの楽しみ方です。
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