発酵の国、ニッポン。大豆とミルクが織りなす「菌」の芸術。

世界一の長寿国・日本を支えてきたのは、古来より受け継がれる「大豆発酵食品」の力です。納豆、味噌、醤油、豆腐。これらは単なる食品ではなく、先人の知恵が詰まった天然のサプリメントです。
一方、日本の「乳製品」も驚くべき進化を遂げています。北海道から九州まで、熱意ある酪農家がつくるクラフトチーズや、牧場直送のスイーツは、本場ヨーロッパを驚かせるほどのクオリティ。伝統の「和」と革新の「洋」、日本の食卓を豊かにするタンパク源を総力特集します。

乳製品・大豆製品の選び方と基礎知識

日本の食卓を支える最強の発酵食。「納豆」の底力

日本の朝の風景に欠かせない納豆。その市場規模は2,500億円を超え、日本全体で年間約40億パック以上(!)が消費されていると言われる、まさに「国民食」です。
蒸した大豆に納豆菌をふりかけて発酵させるこのシンプルな食品には、世界が驚くべき健康パワーと、産地の歴史が詰まっています。

・聖地「茨城・水戸」のブランド
納豆といえば茨城県水戸市。なぜこの地が名産地となったのか? それは、水戸地方で採れる大豆が、小粒で良質だったからです。
元来、農家が自家用に作っていた納豆を、明治時代に「水戸納豆」として駅のホームで販売したところ、その美味しさが全国に広まりました。
今でも茨城には、昔ながらの製法を守る老舗メーカーが数多く存在し、藁(わら)の香りが芳醇な「本場の味」を作り続けています。

・天然のサプリメント(栄養の深堀り)
納豆の健康効果は科学的にも証明されています。
1. ナットウキナーゼ: 納豆のネバネバに含まれる酵素。血管につくられる血栓を溶かす作用があり、血液をサラサラにする効果が期待されています。
2. ビタミンK2: カルシウムが骨になるのを助けるビタミン。納豆の含有量は全食品の中でトップクラスで、骨粗鬆症予防の強い味方です。
3. ポリアミン: 近年注目されている成分。細胞の生まれ変わりを助け、老化防止(アンチエイジング)や美肌効果が期待されています。
4. 大豆イソフラボン: 女性ホルモンに似た働きをし、バランスを整えます。

・藁苞(わらづと)のロマン
スーパーで売られる発泡スチロール容器も便利ですが、ぜひ一度、本物の「藁苞納豆」を取り寄せてみてください。
藁に棲みついている天然の納豆菌の力で発酵した豆は、余分な水分が藁に吸収されるため、ギュッと締まった濃い味わいになります。それは、単なる食品を超えた「日本の原体験」とも言える味わいです。


和食の味を決める国菌。「麹(こうじ)」と「味噌」

醤油、味噌、みりん、酒、酢。これら日本料理に欠かせない調味料は、すべて「麹菌(こうじきん)」というカビの一種から生まれています。
日本の「国菌」にも指定されているこの微生物は、素材のデンプンを「糖(甘み)」に、タンパク質を「アミノ酸(旨み)」に分解する、偉大な料理人です。

・麹の種類と特徴
実は麹にはいくつかの種類があります。
1. 米麹(こめこうじ): 最も一般的。お米に麹菌をつけたもの。甘みが強く、味噌や甘酒、日本酒の原料になります。
2. 麦麹(むぎこうじ): 麦独特の香ばしさがあり、九州地方の麦味噌や焼酎に使われます。
3. 豆麹(まめこうじ): 大豆そのものに麹菌をつけたもの。八丁味噌(愛知)の原料で、濃厚なコクと渋みが特徴です。

・魔法の調味料「塩麹」と「醤油麹」
近年、家庭料理で定着した「発酵調味料」。その調理効果は科学的にも証明されています。
塩麹(しおこうじ):
米麹、塩、水を混ぜて発酵させたもの。最大の特徴は「酵素(プロテアーゼ)」の働きです。肉や魚を漬け込むと、酵素がタンパク質を分解し、驚くほど柔らかくジューシーに仕上げます。鶏むね肉もしっとり仕上がります。
醤油麹(しょうゆこうじ):
米麹を醤油に漬け込んだもの。塩麹の10倍以上の旨み成分(グルタミン酸)があると言われ、冷奴に乗せたり、卵かけご飯に使ったりするだけで、高級料亭のような深みが出ます。

・生きている「味噌」を選ぶ
スーパーに並ぶ安価な味噌の多くは、発酵を止めるために加熱殺菌されています。
しかし、蔵元から取り寄せる「生味噌(なまみそ)」は、麹菌や酵母が生きて活動しています。
香りや風味が日々変化し、腸内環境を整える「菌活」の効果も期待できる生味噌。地域ごとの「テロワール(風土)」を味わうなら、ぜひ無添加の生味噌を選んでみてください。


世界が賞賛。日本の「クラフトチーズ」と牧場スイーツ

今、日本のナチュラルチーズが熱いです。「ワールドチーズアワード」などの国際コンクールで、日本の工房が金賞を連発しています。

・日本独自のチーズ:
桜の葉で包んで熟成させたチーズ、日本酒の酒粕に漬け込んだウォッシュチーズ、味噌漬けのモッツァレラ。日本の発酵文化と融合したチーズは、ワインだけでなく日本酒にも合います。

・牧場直営スイーツ:
搾りたての生乳(せいにゅう)をその場で加工するからこそできる味があります。
ソフトクリーム: 濃厚なのに後味さっぱり。これは新鮮なミルクの証拠です。
牧場プリン: 卵と牛乳と砂糖だけ。輸送による振動がないため、ギリギリの柔らかさで固めた、とろける食感が楽しめます。


牛乳を選ぶ基準。「ノンホモ・低温殺菌」とは?

「牛乳なんてどれも同じ」と思っていませんか? お取り寄せレベルの牛乳は、製法が全く異なります。

1. ノンホモジナイズド(ノンホモ)
通常、牛乳は脂肪球を細かく砕いて均質化(ホモジナイズ)しますが、あえてそれをしない製法。静置すると上部にクリームの層ができ、振って飲むとバターのようなコクを感じます。お腹がゴロゴロしにくいとも言われています。

2. 低温殺菌(パスチャライズ)
63〜65℃で30分間ゆっくり殺菌する方法。タンパク質が熱変性しないため、生乳に近い「サラッとした甘み」が残ります。手間とコストがかかるため、市場には数%しか出回らない貴重な牛乳です。


「本物」の豆腐・豆乳の選び方

豆腐や豆乳の原材料欄を見てください。「大豆(国産)」とだけ書かれているものが理想です。
大量生産品の中には、粉末状の大豆タンパクを使ったり、消泡剤(グリセリン脂肪酸エステル)を使って泡を消したりしているものがあります。
国産大豆100%、天然にがり100%で作られた豆腐は、大豆の甘みが濃厚で、醤油がいらないほどです。「消泡剤不使用」の表記は、職人が手間をかけて泡を取り除いた、誠実な仕事の証です。


よくある質問(Q&A)

Q. 納豆の賞味期限が切れそうです。
A. 納豆は冷凍保存が可能です。パックのまま冷凍庫に入れれば1ヶ月ほど持ちます。食べる前日に冷蔵庫に移して自然解凍すれば、風味も粘りもほぼ変わりません。

Q. ナチュラルチーズの保存方法は?
A. チーズは「生きて」います。乾燥が大敵なので、切り口をラップでぴったり包み、さらに密閉容器やジップロックに入れて冷蔵庫の野菜室(温度が低すぎない場所)へ。食べる30分前に室温に戻すと、香りと口溶けが良くなります。

Q. ヨーグルトの上に溜まる水は何?
A. 「ホエイ(乳清)」と呼ばれる成分です。捨てないでください! 水溶性のタンパク質やミネラル、ビタミンが豊富に含まれています。混ぜて食べるか、味噌汁やスムージーに入れるのがおすすめです。