事業者・ブランド紹介

いぶりがっこ本舗 雄勝野きむらや

奥羽山脈のふところ・雄勝野から、焚き木干し沢庵「いぶりがっこ」を届ける秋田漬物の老舗。無添加にこだわり、山里の風味をそのまま食卓へ。

秋田県湯沢市・雄勝野の地で昭和38年に創業した株式会社雄勝野きむらやは、山里で親しまれてきた野菜や山菜を使い、古来の製法を受け継いだ秋田漬物をつくり続ける専門メーカーです。ナラやサクラなどの広葉樹の焚き木で大根を燻し、米ぬかと塩を主体とした沢庵仕込みで漬け上げる焚き木干し沢庵「いぶりがっこ」は、家伝のいぶり漬けを再現した看板商品。現在では「いぶりがっこ」発祥の店のひとつとして全国に知られ、地理的表示(GI)にも登録された地域を代表する漬物へと育ちました。保存料や合成着色料、酸化防止剤、合成甘味料などの添加物はできるかぎり使わず、素材そのものの素朴で自然な風味を大切にしたものづくりで、山里の情景が浮かぶような味わいを届けています。

〒012-0105 秋田県湯沢市下院内字常盤町91番地 いぶりがっこほんぽ おがちのきむらや
いぶりがっこ本舗 雄勝野きむらや

PROFILE 企業・工房について

雄勝野きむらやの歩みは、秋田県南の山里で受け継がれてきた家伝の漬物づくりから始まりました。昭和38年、創業者・木村次郎氏と妻ヒデヨ氏が、シソ巻き山ごぼうやたけのこ味噌漬といった素朴な漬物を手がけたのが原点です。その後、地場の山菜を生かした味噌漬や粕漬を開発し、駅の売店や温泉旅館、デパートなどへ販路を広げていきました。

転機となったのは、冬の保存食として各家庭で作られてきた「大根のいぶり漬け」が、暮らしの変化や薪ストーブの普及により姿を消しつつあったこと。きむらやは家に伝わるいぶり漬けをヒントに、大根を燻しながら漬け込む製法の再現と量産化に挑戦しました。囲炉裏を掘り込んだ燻製庫を整え、燻製温度や火加減、使用する木の種類を何度も試行錯誤しながら、芯まで火が入りつつも、歯切れよく香り高い大根に仕上げる方法を確立していきました。

やがて米ぬかと塩、ザラメを主体とした沢庵仕込みの製法と真空包装、加熱殺菌を組み合わせた焚き木干し沢庵「いぶりがっこ」が誕生します。携帯性と保存性が高く、観光みやげにも適したパッケージは好評を博し、秋田の物産展やお土産品として全国へと広がりました。秋田湯沢の刻み漬け「雪ぐら漬」や味噌漬など、新たな商品も次々と生まれ、きむらやの名は秋田漬物の代名詞のひとつとなっていきます。

その一方で、「いぶりがっこ」の商標が一般名称かどうかをめぐる議論も生まれました。きむらやは商標権を振りかざすのではなく、一定の品質基準を設けたうえで地域全体のブランドを守っていくべきだと考え、行政や生産者団体とともにGI制度(地理的表示保護制度)に基づく運用へと舵を切ります。現在では「いぶりがっこ」はGI登録産品となり、伝統製法と地域性に裏打ちされた正統な漬物として位置づけられています。

今もなお、雄勝野きむらやは「風味求心」という言葉を掲げ、伝承の技と設備投資、品質管理の強化を両立させながら、現代の暮らしにも寄り添う山里の味を届けています。焚き木の煙が立ちのぼる燻醸所や熟成冷蔵庫では、一年を通していぶりがっこや山菜漬けが静かに時間を重ね、食卓にのぼるその瞬間を待っています。

豪雪の山里が育む、漬物づくりに適した風土

雄勝野きむらやが拠点とする秋田県湯沢市(旧雄勝町)は、四方を山々に囲まれた豪雪地帯。降り積もった雪は春になると清流となって山野を潤し、香り豊かで生命力にあふれた野菜や山菜を育てます。長く厳しい冬を乗り越えるための保存食として発展してきた漬物文化と、豊かな自然環境が、現在の秋田漬物づくりの土台になっています。

焚き木干し沢庵「いぶりがっこ」発祥の老舗

薪ストーブの普及などで各家庭の大根いぶり漬けが減っていった時代に、家伝のいぶり漬けを手がかりに量産化に挑戦し、焚き木干し沢庵「いぶりがっこ」を商品化。真空パックや加熱殺菌、燻製設備の改良を重ねて観光みやげとしても愛される看板商品へと育ててきました。現在では「いぶりがっこ」商標の取得や、GI登録産品としての取り組みを通じて、秋田を代表する名物漬物として全国に知られています。

無添加へのこだわりと、素材本来の風味

きむらやの製品づくりは、古来の製法を基に、漬物本来の特性を損なわないことが出発点。保存料や合成着色料、酸化防止剤、合成甘味料、うま味調味料などはできるかぎり使用せず、素材の旬と鮮度にこだわって丁寧に漬け込みます。手間と時間はかかりますが、その分、米ぬかや木の香り、大根や山菜そのものの素朴な味わいが感じられる一品に仕上がります。

いぶりがっこを軸に広がる秋田漬物のラインナップ

看板商品のいぶりがっこに加え、いぶりにんじんや山ごぼう味噌漬、雪ぐら漬、梅漬け、山うど漬、ふきのとう漬けなど、秋田の山里ならではの漬物を幅広く展開。業務用スライスやふりかけ、おつまみタイプなど、食べ方やシーンに合わせた形状・味付けの提案も積極的に行い、全国の食卓や飲食店で「山里の風味」を楽しめるようにしています。