伊賀焼窯元 長谷園

長谷園の歴史は、江戸後期の天保3年（1832年）、山深い伊賀市丸柱の地で始まりました。伊賀はかつて湖底だった地形から良質な陶土に恵まれ、江戸時代には直火に強い行平鍋や土瓶などが盛んに作られてきました。その流れを汲む窯元として、長谷園は「伊賀焼」の伝統と技術を継承しながら、時代に合わせた民具や土鍋づくりを続けてきました。

伊賀の粗土は、耐火性と蓄熱性に優れる一方で、扱いが難しい側面もあります。長谷園ではその性質を熟知した職人たちが、成形・乾燥・焼成の工程を繰り返し研究し、現代のキッチンや食卓に合う形・厚み・釉薬を追求してきました。ザラザラとした肌、特徴的な蓋の形やうずまき模様など、一見ユニークな意匠もすべて「美味しい」という結果につながる機能から生まれています。

1970年代以降は、ライフスタイルの変化とともにガスコンロやIHクッキングヒーターなど調理環境も多様化。長谷園では直火専用土鍋に加え、IH対応の伊賀土鍋やオーブン向けの耐熱器、グリルで使える「直火の器」など、現代のキッチンにフィットする器づくりにも注力してきました。

現在は伊賀本店と東京店を拠点に、直営店での販売やイベント、土鍋料理教室、ポップアップストアなどを展開。オンラインでは公式通販サイトやWebレシピ、長谷園だより、SNSを通じて情報発信を行い、「土鍋のある暮らし」を国内外のユーザーへ広く届けています。

伊賀の粗土が生む「伊賀土鍋」のちから

長谷園の土鍋は、太古に湖底だった伊賀の地層から産出される「伊賀の粗土」を生かしてつくられています。生物や植物の化石を多く含むこの土は耐火度と蓄熱性が高く、じんわりと熱が伝わり、火から下ろしても冷めにくいのが特長。直火調理に耐える強さを持ちながらも、遠赤外線効果で食材の芯までふっくらと加熱し、素材本来の旨みを引き出します。

「かまどさん」に代表される機能土鍋シリーズ

火加減いらずで吹きこぼれにくく、失敗なくご飯が炊ける炊飯土鍋「かまどさん」をはじめ、燻製専用土鍋「いぶしぎん」、蒸し料理が得意な「ヘルシー蒸し鍋」、煮込みやスープ向きの「みそ汁鍋」や「ふっくらさん」、オーブン調理に活躍する「ロースト土鍋」や「ビストロ土鍋」など、用途にあわせて選べる多彩なラインナップが魅力です。

「作り手は真の使い手であれ」――使い手目線のものづくり

長谷園の工房訓は「作り手は真の使い手であれ」。食卓で本当に使いやすく、日常使いしたくなるかどうかを大切に、土の可能性と向き合いながら道具づくりを続けています。「食卓は遊びの広場だ」という想いのもと、家族や仲間が土鍋を囲んで会話を楽しみ、「美味しい」と「楽しい」が重なるシーンを思い描きながら商品開発が行われています。

窯出し市やWebレシピで広がる「土鍋のある暮らし」

毎年5月に伊賀本店で開催される大陶器まつり「窯出し市」では、さまざまな伊賀焼やアウトレット品が並び、土鍋ファンが全国から訪れます。自社メディア「長谷園だより～土鍋のある暮らし～」や「Webレシピ」では、季節の献立や土鍋の活用アイデア、イベント情報などを発信し、特別な日だけでなく日常の食卓に土鍋を取り入れる楽しさを提案しています。